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2004.10.30

日本酒本の陥穽

 今月は日本酒本を3冊まとめ買いして、立て続けに読んだ。まずは「うまい日本酒はどこにある?」(増田晶文、草思社)の感想から。

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 例によって記述の正確度チェックから。「並行複発酵で醸す酒は世界でも日本酒だけだ(※1)」「大多数の酒が酒造好適米で醸される(※2)」等々の間違いが散見されるが、業界人ではないライターによる日本酒の本としてはかなりマトモ。実際、醸造試験所(現在は酒類総合研究所)や国税庁・ナショナルブランド(灘・伏見の大手)の関係者を除くと、基礎的な知識に関し、聞きかじりの知ったかぶりで済ませる筆者が多いのが日本酒の本の特徴だが、この程度なら最優秀の部類に入る。
 内容は、地酒蔵・ナショナルブランド・酒販店・飲食店‥‥ と日本酒に職業的に関わる人々の話を数多く聞きながら、日本酒復活の手立てを探っていくというもの。日本酒の危機的状況を分析し、それに立ち向かう者達のルポルタージュの部分は読みごたえがあるし、この手の内容の本では珍しく、ナショナルブランドの言い分まで公正に伝えようとする姿勢にも好感がもてる。さらに、p.141 の記述、

静岡といえば『開運』『国香』『初亀』『磯自慢』『喜久酔』‥‥

と、メディアに取り上げられる機会の多い「静岡吟醸の四天王」に伍して、しかも「磯自慢」を差し置いて二番目に國香を紹介しているところもチョベリグ~♪(爆) ただし、『国香』は『國香』であるべきだし、『初亀』の振り仮名も「はつがめ」ではなく「はつかめ」であるべきだ。

 それにしても「小夜衣」の森本社長(本書では杜氏とされている)が出てくる、入野酒販も出てくる、とおるちゃんまで出てくる、とまぁ親近感を覚えます(笑) (そういや、今日はえび蔵さんが借り切っていたよなぁ、とおるちゃんのお店。行きたかった‥‥)

 閑話休題。

 本書の問題箇所は、結語たる「日本酒復活への道」とあとがきだろう。ここへ来て、それまでのルポルタージュの価値を減じる、抽象的で陳腐な内容に堕ちているのだ。何のためのルポルタージュだったのか‥‥ 参考にしたという文献が悪いのかもしれないが、聞きかじりの怪しい論もみられる。途中でも先入観らしきものが文章に浮かんだり沈んだりしていたが、それが取材を経ても修正されず、結語として最後の数ページで噴出している。ここで私の評価は2段階ほど下がってしまった。なんのための取材、インタビューだったのだろう。勿体ない。

 ところで、筆者が参照したという2冊はこれだ。

「純米酒を極める」(上原浩、光文社新書)
「決定版日本酒がわかる本」(蝶谷初男、ちくま文庫)

わかる人にはわかるだろうが、興味深い組み合わせだ。天麩羅と西瓜を食べ合わせるようなもの、とも言える(笑)。この2冊に

「問題の酒 本物の酒」(大嶋幸治、双葉社)

を加えると、私の認定する「日本酒の素人、あるいは初級マニアが読むと、効能より毒の大きい日本酒本トップスリー」になる(爆) この3冊、筆者のスタンスが「ファクトより持論を強調」であるところが共通しているが、肝心の持論は三者三様である。特に「日本酒はすべからく純米酒であるべし」を基調とする「純米酒を極める」と、「アル添にあらずば吟醸酒にあらず」を基調とする「決定版日本酒がわかる本」のスタンスの違いは決定的で、かつ、どちらもその感染力が強烈だ。この2冊の一方から入った初級マニアは先入観にとりつかれるだろうし、両方を並行して読んだら、こんどは分裂症になりかねない(笑) 「どっちを信じればいいんだ~?」と。

 日本酒に興味をもった人が最初に読むべき本は、公務員たる醸造研究所や国税庁の関係者、あるいは醸造学の専門家(大学教授など)の手になる、教科書的な本にすべきだ。凡庸で浅薄に見えても、中立的で視野の広いところは後々ためになる。逆に、エキセントリックで面白い日本酒本には、上述の通り大きな陥穽がある。「うまい日本酒はどこにある?」にも初心者にとっての陥穽があるし、その前に、本書の筆者がその陥穽に嵌っているようにも見える。

註:
(※1)中国の黄酒(紹興酒など)や朝鮮のマッカリも並行複発酵。
(※2)酒の原料米に占める酒造好適米の割合は3割以下で、7割強は一般米(飯米)。

 本館サイト: http://www.dd.iij4u.or.jp/~kshimz/  E-Mail: kshimz@dd.iij4u.or.jp

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2004.10.29

外道が作ってヤクザが売る

 かつて新聞は「インテリが作ってヤクザが売る」と評された。今はちがう。表題の通り「外道が作ってヤクザが売る」にまで成り下がった。新潟中越地震の報道状況を見れば一目瞭然だ。1995年1月17日に発生した阪神大震災や、それ以前の雲仙普賢岳噴火の頃から指摘され続けている問題が改善されないどころか、今度は、自衛隊ヘリコプターをタクシー代わりに使う報道関係者が出る始末。早速、あるブログサイト に所属会社名が晒されているが、ますます外道、あるいは無道・非道ぶりがエスカレーションしている。

 阪神大震災の直後、IIJ(当時)の小田島さんが立ち上げられた「阪神大震災時のテレビ報道のありかたについての意見」のページが報道被害者の生の声と感情をよく伝えていた(私も寄稿した記憶あり)。あれを見れば問題点は余すところなく理解できると思うのだが、すでに終了し痕跡もないため、上澄みを集めた文章をいくつか引用してみたい。興味がある方は、ぜひオリジナルの全文を読むことをお勧めする。

・時事通信社の中川さんがまとめられた「阪神大震災・兵庫県国際検証」所収の、廣井脩(東大社会情報研究所所長)の「災害時のマスコミの役割」より;


〇取材・報道活動に対する住民の評価は、極めて厳しかった。報道陣が1週間交代などで入れ替わりで押し寄せることで、復旧業務にも支障をきたし、避難所の取材でも無遠慮な取材がトラブルを引き起こした。少なくなかった事実誤認の記事は、事実確認を怠ったり、背景事情を知らずに書くことで生じたようだ。災害時の大量な記者の動員で、災害報道を記者教育の場にするようなことは納得できない。

〇マスコミのヘリコプター取材が、騒音によって救出活動の妨げになったのではとの批判があった。日本新聞協会でも議論されたが、協定による自粛が見送られたが、広島原爆の記念式典当日でのヘリ取材の自主規制などの例もある。人命にかかわる重要な事態であれば、マスコミ自身が自粛や共同取材の道を選ぶのが極めて当然と考える。

・上の報告のベースとなった研究:「検証テーマ 災害時のマスコミの役割に関する課題とあり方は?」の「③取材・報道体制の是正」より;

〇マスメデイアは市民の代表であるから、マスメデイアに情報を伝えることは市民に情報を伝えることだとはわかっていても、限度というものがある。以下の表に示すように、各機関からほとんど同じ感想が聞かれるということは、それだけ普遍的な現象だったということである。  (中略)  どうしてこういう現象が起こるかというと、マスコミ関係者の説明では、全国紙の本社、あるいは全国ネットの放送局には、若い記者を震災という修羅場に派遣して訓練しようと言う意図があった、だから遠くから若い記者が来て1週間で交代するようなことになるのだという。

〇なかには、手続きを踏まないで、管理者に無断で取材し、「ここの避難所では2日間でバナナが1本しかもらえなかった」などという事実とちがう映像が突然テレビで放映されるようなこともあった。 (中略) 避難所への無遠慮な取材がトラブルえお引き起こしたケースは、私が知っているだけでも1984年の長野県西部地震、89年の伊東沖海底噴火、93年の北海道南西沖地震など少なくないが、依然としてこうした取材が行われているわけである。

〇先にも述べたように、災害時には放送は、その業務を通じて防災に貢献しなければならない法的義務を負っている。 (中略) しかし一方、ライフライン機関から、次のような話も聞いている。

 大阪ガス :『顧客への告知として、震災時のガス漏れの注意とマイコンメーターの復帰方法について、17日夕刻からスポンサーとしてCMを買い取って流した。NHKは無料だが、民放の場合、震災当日の夕刻までは特別番組の中で流してくれたが、夕刻以降はCMという形となり、経費がかかった。また、新聞は震災翌日の1月18日朝刊5紙に新聞広告を全7段、夕刊に全5段で掲載した。内容は、ガスの供給停止地域や、ガス使用時の注意事項、メーターの復帰方法などだが、震災当日から、広告担当者はCMの交渉と新聞の枠取りに追われた。しかも、特急料金でふだんより高くなっていた。』

 それにしても、あの大震災当日から電気・ガスという市民生活を左右する重要な情報にCM料金を取り、しかも場合によっては特急料金をとるのは、常識からみてどんなものだろうか。

・「朝日新聞アエラ・フォトディレクター」の肩書きを持つ徳山喜雄氏の手になる「メディアン・ルーレット」の「No.14:眼下の惨劇への想像力」より


〇今月8日に事件発生から丸3年になる大阪府池田市の小学生殺傷事件では、現場が大阪空港から離陸して1分ほどで着くという近距離であったこともあり、血まみれになって救急車に運ばれる児童らの生々しい映像がヘリから撮影された。事件発生直後の現場上空には、多いときで9機のヘリが同時に舞ったという。 (中略) 池田小学校事件被害者の父親酒井肇さんは、「娘は病院に向かう救急車のなかで死亡した。ヘリで運んだら助かったかもしれない。家内は学校に駆けつけたが、搬送された病院名を告げる先生の声が、ヘリの音でかき消されて聞こえなかった」などと抗議している。また、取材ヘリの騒音で消防車の無線情報が正確に伝わらなかったという話しもある。私も何度も経験したが、複数のヘリが低空で現場上空を旋回するときは、まるで爆音が響く戦場のようだ。人質事件などの場合、容疑者を刺激し興奮させる。

 このように、すでにメディアの側の人間からも問題が提起され、世間の厳しい目があることを知っているはずなのに、報道(取材)の現場では、何も改善されていない。むしろ、冒頭に挙げたように報道関係者の傍若無人ぶりはますます酷くなっているように見える。

 じつは、阪神大震災の後、政府(国土庁防災局)の中央防災会議の専門委員会で、国の防災基本計画の見直しが行われ、被災地上空のヘリコプター取材規制について論議されたことがある。ある専門委員は「メキシコ地震の人命救助に際して大統領の号令で、すべてのヘリ、航空機の上空飛行が一切禁止され、被災者救出のために静穏を作り出した。ヘリコプターの騒音は救出活動の妨げになる」という意見を述べ、「大地震発生直後、救助や消火活動がヤマを越えるまで(約72時間程度)、被災地とその上空でのマスコミ取材を禁止、または自粛を求める。」という私案(改訂のたたき台)を出した。ところが、これを時事通信社が1995年3月7日にスクープしたことから、マスコミ各社が「ヘリによる報道は、災害規模や被害状況の全体的把握を可能にし、救助・救援などの対応準備に大きな役割を果たした」と猛反対し、結局は安全運航、騒音対策を定めた 日本新聞協会 の「航空取材要領」に基づき自主規制を行う仕組みがあるという屁理屈で、取材規制が防災基本計画に盛り込まれることを回避したのである。

 さて、以下はその 航空取材要領 からの抜粋である。

(3) 航空機の騒音によって取材対象の行事や作業ならびに一般の日常生活に支障を与えないよう、また地上の人または物件に危険を及ぼさないよう、必要な高度及び速度の維持に十分注意する。

(4) 同一対象を複数機で取材する場合、以下の原則に従って整然と飛行し、空中衝突の防止に万全を期す。

(6) 予定される行事などで多数の航空機が集まることが予想される場合は、取材方法または飛行のルールなどについて、必要に応じ関係者間で事前協議を行う。

 明らかに、今回もこの自主規制は行われていない。絵に描いた餅、机上の作文であることは、以前から識者が指摘するところだ。「なにぶんにも初めてのことじゃから」の阪神大震災から9年、行動の面では何も進化がないどころか、退化しているのが新聞をはじめとするマスメディアだ。こういうメディアに政府や地方行政当局を責める資格はあるのか? 銀行業界や証券業界を笑えるのか? はたまた、三菱自動車や雪印を‥‥ 

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2004.10.22

ニッカ、サントリー、オールドパー ‥‥ ビンテージ2004年

 「ニッカ、サントリー、オールドパー」といえば、1964年の自民党総裁選で、現職の池田勇人総裁(首相)に対して佐藤栄作・藤山愛一郎が立候補し、三つ巴の戦いを繰り広げた際に生まれた隠語である。自民党の総裁選は公然たる派閥抗争であり、各陣営は候補を立てなかった派閥の議員に対し、大臣ポストやカネで勧誘する「1本釣り」を行った。この際に、二派からカネをもらった議員を「ニッカ」、三派からカネをもらった議員を「サントリー」と呼び、さらには三派からもらいながら誰にも投票しない議員を「オールドパー」と言った。

 さて、この隠語が40年ぶりにリバイバルするのではないか。その理由は以下のニュースである。

阪神からの金銭授受認める 明大野球部の別府元総監督

 明大野球部の別府隆彦元総監督は22日、一場靖弘投手がプロ野球の巨人、横浜に続き、阪神からの現金授受についても「大した額じゃないが、もらっているだろう」と金銭の受け取りがあったことを認める発言をした。
 (中略)
 別府元総監督は「やっていたことは悪いが、既に巨人の件で(退部という)制裁は受けている。既に終わっている話。蒸し返しで、一場がかわいそうだ」と擁護の姿勢を示した。 (共同通信 FLASH24

事が明るみに出た以上、一場クンは巨人・横浜・阪神の三球団には行かせてはもらえないだろう。あれだけ偽善と事なかれ主義に凝り固まったプロ野球機構のことだから、金銭授受を行ったとされる球団への逆指名・球団による指名はないだろう。公式に指名権が停止されたという話は聞いていないが、暗黙の了解事項になっているようだ。(まことに日本は空気の国ですね。雰囲気で決まってしまうのねぇ。ま、強行指名しようものならファンにソッポを向かれるのは火を見るより明らかですが‥‥ )

さて。

カネをもらっていたのは一場クンだけだろうか? 氷山の一角ではないのか? 今後、二股・三股がバレる有名アマ選手、あるいはプロ入り済みの選手が続出しそうな気がする。そこで出てくるフレーズは、「ニッカ、サントリー、オールドパー ‥‥」

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