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2004.10.29

外道が作ってヤクザが売る

 かつて新聞は「インテリが作ってヤクザが売る」と評された。今はちがう。表題の通り「外道が作ってヤクザが売る」にまで成り下がった。新潟中越地震の報道状況を見れば一目瞭然だ。1995年1月17日に発生した阪神大震災や、それ以前の雲仙普賢岳噴火の頃から指摘され続けている問題が改善されないどころか、今度は、自衛隊ヘリコプターをタクシー代わりに使う報道関係者が出る始末。早速、あるブログサイト に所属会社名が晒されているが、ますます外道、あるいは無道・非道ぶりがエスカレーションしている。

 阪神大震災の直後、IIJ(当時)の小田島さんが立ち上げられた「阪神大震災時のテレビ報道のありかたについての意見」のページが報道被害者の生の声と感情をよく伝えていた(私も寄稿した記憶あり)。あれを見れば問題点は余すところなく理解できると思うのだが、すでに終了し痕跡もないため、上澄みを集めた文章をいくつか引用してみたい。興味がある方は、ぜひオリジナルの全文を読むことをお勧めする。

・時事通信社の中川さんがまとめられた「阪神大震災・兵庫県国際検証」所収の、廣井脩(東大社会情報研究所所長)の「災害時のマスコミの役割」より;


〇取材・報道活動に対する住民の評価は、極めて厳しかった。報道陣が1週間交代などで入れ替わりで押し寄せることで、復旧業務にも支障をきたし、避難所の取材でも無遠慮な取材がトラブルを引き起こした。少なくなかった事実誤認の記事は、事実確認を怠ったり、背景事情を知らずに書くことで生じたようだ。災害時の大量な記者の動員で、災害報道を記者教育の場にするようなことは納得できない。

〇マスコミのヘリコプター取材が、騒音によって救出活動の妨げになったのではとの批判があった。日本新聞協会でも議論されたが、協定による自粛が見送られたが、広島原爆の記念式典当日でのヘリ取材の自主規制などの例もある。人命にかかわる重要な事態であれば、マスコミ自身が自粛や共同取材の道を選ぶのが極めて当然と考える。

・上の報告のベースとなった研究:「検証テーマ 災害時のマスコミの役割に関する課題とあり方は?」の「③取材・報道体制の是正」より;

〇マスメデイアは市民の代表であるから、マスメデイアに情報を伝えることは市民に情報を伝えることだとはわかっていても、限度というものがある。以下の表に示すように、各機関からほとんど同じ感想が聞かれるということは、それだけ普遍的な現象だったということである。  (中略)  どうしてこういう現象が起こるかというと、マスコミ関係者の説明では、全国紙の本社、あるいは全国ネットの放送局には、若い記者を震災という修羅場に派遣して訓練しようと言う意図があった、だから遠くから若い記者が来て1週間で交代するようなことになるのだという。

〇なかには、手続きを踏まないで、管理者に無断で取材し、「ここの避難所では2日間でバナナが1本しかもらえなかった」などという事実とちがう映像が突然テレビで放映されるようなこともあった。 (中略) 避難所への無遠慮な取材がトラブルえお引き起こしたケースは、私が知っているだけでも1984年の長野県西部地震、89年の伊東沖海底噴火、93年の北海道南西沖地震など少なくないが、依然としてこうした取材が行われているわけである。

〇先にも述べたように、災害時には放送は、その業務を通じて防災に貢献しなければならない法的義務を負っている。 (中略) しかし一方、ライフライン機関から、次のような話も聞いている。

 大阪ガス :『顧客への告知として、震災時のガス漏れの注意とマイコンメーターの復帰方法について、17日夕刻からスポンサーとしてCMを買い取って流した。NHKは無料だが、民放の場合、震災当日の夕刻までは特別番組の中で流してくれたが、夕刻以降はCMという形となり、経費がかかった。また、新聞は震災翌日の1月18日朝刊5紙に新聞広告を全7段、夕刊に全5段で掲載した。内容は、ガスの供給停止地域や、ガス使用時の注意事項、メーターの復帰方法などだが、震災当日から、広告担当者はCMの交渉と新聞の枠取りに追われた。しかも、特急料金でふだんより高くなっていた。』

 それにしても、あの大震災当日から電気・ガスという市民生活を左右する重要な情報にCM料金を取り、しかも場合によっては特急料金をとるのは、常識からみてどんなものだろうか。

・「朝日新聞アエラ・フォトディレクター」の肩書きを持つ徳山喜雄氏の手になる「メディアン・ルーレット」の「No.14:眼下の惨劇への想像力」より


〇今月8日に事件発生から丸3年になる大阪府池田市の小学生殺傷事件では、現場が大阪空港から離陸して1分ほどで着くという近距離であったこともあり、血まみれになって救急車に運ばれる児童らの生々しい映像がヘリから撮影された。事件発生直後の現場上空には、多いときで9機のヘリが同時に舞ったという。 (中略) 池田小学校事件被害者の父親酒井肇さんは、「娘は病院に向かう救急車のなかで死亡した。ヘリで運んだら助かったかもしれない。家内は学校に駆けつけたが、搬送された病院名を告げる先生の声が、ヘリの音でかき消されて聞こえなかった」などと抗議している。また、取材ヘリの騒音で消防車の無線情報が正確に伝わらなかったという話しもある。私も何度も経験したが、複数のヘリが低空で現場上空を旋回するときは、まるで爆音が響く戦場のようだ。人質事件などの場合、容疑者を刺激し興奮させる。

 このように、すでにメディアの側の人間からも問題が提起され、世間の厳しい目があることを知っているはずなのに、報道(取材)の現場では、何も改善されていない。むしろ、冒頭に挙げたように報道関係者の傍若無人ぶりはますます酷くなっているように見える。

 じつは、阪神大震災の後、政府(国土庁防災局)の中央防災会議の専門委員会で、国の防災基本計画の見直しが行われ、被災地上空のヘリコプター取材規制について論議されたことがある。ある専門委員は「メキシコ地震の人命救助に際して大統領の号令で、すべてのヘリ、航空機の上空飛行が一切禁止され、被災者救出のために静穏を作り出した。ヘリコプターの騒音は救出活動の妨げになる」という意見を述べ、「大地震発生直後、救助や消火活動がヤマを越えるまで(約72時間程度)、被災地とその上空でのマスコミ取材を禁止、または自粛を求める。」という私案(改訂のたたき台)を出した。ところが、これを時事通信社が1995年3月7日にスクープしたことから、マスコミ各社が「ヘリによる報道は、災害規模や被害状況の全体的把握を可能にし、救助・救援などの対応準備に大きな役割を果たした」と猛反対し、結局は安全運航、騒音対策を定めた 日本新聞協会 の「航空取材要領」に基づき自主規制を行う仕組みがあるという屁理屈で、取材規制が防災基本計画に盛り込まれることを回避したのである。

 さて、以下はその 航空取材要領 からの抜粋である。

(3) 航空機の騒音によって取材対象の行事や作業ならびに一般の日常生活に支障を与えないよう、また地上の人または物件に危険を及ぼさないよう、必要な高度及び速度の維持に十分注意する。

(4) 同一対象を複数機で取材する場合、以下の原則に従って整然と飛行し、空中衝突の防止に万全を期す。

(6) 予定される行事などで多数の航空機が集まることが予想される場合は、取材方法または飛行のルールなどについて、必要に応じ関係者間で事前協議を行う。

 明らかに、今回もこの自主規制は行われていない。絵に描いた餅、机上の作文であることは、以前から識者が指摘するところだ。「なにぶんにも初めてのことじゃから」の阪神大震災から9年、行動の面では何も進化がないどころか、退化しているのが新聞をはじめとするマスメディアだ。こういうメディアに政府や地方行政当局を責める資格はあるのか? 銀行業界や証券業界を笑えるのか? はたまた、三菱自動車や雪印を‥‥ 

 本館サイト: http://www.dd.iij4u.or.jp/~kshimz/  E-Mail: kshimz@dd.iij4u.or.jp

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コメント

トラックバックありがとうございます。
外道が作ってヤクザが売る。それに加え、朝日の場合、「馬鹿が読む」です。

投稿: aki1968 | 2004.10.29 10:15 午後

akiさん、コメントありがとうございます。朝日だけでなく、毎日・中日(東京)もそうですね、「馬鹿が読む」。ただ、作り手の外道ぶりは読売がダントツだという話です(ついでにヤクザぶりも)。それにしても、こういう時こそ地元紙と共同・時事の両通信社に任せるとか、考えて欲しいものです。

ホント、メディアは自分で自分のクビを絞めてますね。

投稿: kshimz | 2004.10.30 12:37 午前

>毎日・中日(東京)もそうですね、「馬鹿が読む」。
そのご意見ですが、中日新聞を読んでる私としては、馬鹿が読む、とされるとなんだかな…となりますね。

通りすがりのponでした。
突然の横レス失礼致しましたm(__)m

投稿: pon | 2004.10.30 02:37 午前

ponさん、コメントありがとうございます。

お気持ちはわかりますが、あの紙面を読み続けられるのは、馬鹿でなければ鈍感ではないかと‥‥ あ、これ、忍耐強い、と書けば波風が立たなくていいのか(笑) でも、東京新聞はカンペキに朝日を超えてます。もうストレートに真っ赤っ赤。朝日のほうは含みを持たせる狡猾な書き方が多いですが。

ちなみに、私の敬愛する阿川弘之氏や故・福田恆在氏は「対朝日 非書く三原則」を唱えておられました。たしか「書かない、買わない、読まない」だったかな。

私の場合、ときどき他紙との比較のためネットで読んでしまうので、実行しているのは 2.5 原則くらいかな‥‥

投稿: kshimz | 2004.10.30 01:45 午後

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