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2004.11.29

実業界は金儲けだけするところではない

 銀行の頭取が次々と経済スキャンダルの渦中にまきこまれ、このところイメージのあまりよくない住友グループだが、戦前の住友財閥のトップには、歴代、人物が揃っていた。初代総理人広瀬宰平は、住友の事業精神について

 「一意殖産興業に身を委ねて、数千万の人々と利益を共に分かち合う

と宣言し、二代目の伊庭貞剛の方針は

 「住友の事業は、住友自身を利すると共に国家を利し、且つ社会を利する底の事業

であった。三代目の鈴木馬左也は総理事就任にあたり

 「自分は正義公道を踏んで、皆と国家百年の仕事をなす考えである

と決意表明し、四代目の中田錦吉は

 「住友の事業は、単なる営利目的の修羅場ではなく、国家社会に貢献するもの

五代目の湯川寛吉は

 「住友は営利会社であるが、同時に国家社会のためにつくすことが住友の伝統

と訓示することを忘れなかったという。(「住友グループ広報委員会:総理事と呼ばれた人」より引用)

 しかるに、経済同友会の北城恪太郎代表幹事(日本IBM会長)の、この発言はどうだ? 以下は経済同友会のサイトにある、記者会見発言要旨(未定稿)からの引用:

Q: 日中首脳会談が行われ、久し振りに両国の首脳が話し合ったが、はかばかしい進展が見られなかったようだ。どうご覧になっているか。

北城:話し合いが行われたということは、色々な背景があったにせよ良かったのではないか。できれば、相互に訪問できて、それぞれの国で会談ができれば更に好ましいと思う。

今回の会談の中で、日中の協力が重要であること、経済を含めて日中の協力関係が進展することの重要性は認識されたと思う。その一方で、靖国問題に関して中国側から批判が出たということだが、(靖国問題は)日本の国内問題であると同時に、中国には、日本の首相がA級戦犯を合祀している靖国神社に参拝することを快く思っていないという国民感情がある。最近のインターネットの普及もあって、中国政府が一方的に国民の意識を制御できる状況でもない。小泉総理が靖国神社に参拝することで、日本に対する否定的な見方、ひいては日系企業の活動にも悪い影響が出るということが懸念される。経済界の意見の大勢だと思うが、総理に今のような形で靖国神社に参拝することは控えて頂いた方がいいと思う。

 経済同友会といえば、9月にも前代表幹事の小林陽太郎(富士ゼロックス会長)が首相の靖国参拝批判を行っていたが、IBMといいゼロックスといい、外資系の多国籍企業という点が共通する。かつてチリのアジェンデ政権がクーデターでピノチェト将軍に倒されたときにも、多国籍企業ITTの関与が取り沙汰されたが、多国籍企業の経営者という人種には、何よりも企業の利益を優先するという姿勢が必要なのだろう。

 そういえば、「経済同友会の概要」というページに、「経済同友会とは」と題した文章がある。その中核部分は以下の通り。

社団法人経済同友会は、終戦直後の昭和21年、日本経済の堅実な再建のため、当時の新進気鋭の中堅企業人有志83名が結集して誕生しました。一貫してより良い経済社会の実現、国民生活の充実のための諸課題に率先して取り組んでいます。

経済同友会は、企業経営者が個人として参加し、自由社会における経済社会の主体は経営者であるという自覚と連帯の下に、一企業や特定業種の利害を超えた幅広い先見的な視野から、変転きわまりない国内外の経済社会の諸問題について考え、議論していくところに最大の特色があります。

なるほど。

 経済同友会の代表幹事の思考回路は、外交問題をも「より良い経済社会の実現」を目標として「経済社会の諸問題」として考えることになっているらしい。そういえば、かつてレーニンは「資本家は自分の首を絞める縄でも売りわたす」と嘲笑したが、北城・小林両氏も「カネのためならどんな難題を吹っかけても叩頭する連中」なのだろう。江沢民の嘲りが聞こえるようだ。

 これに対する、自民党の安倍晋三幹事長代理の苦言はもっともだと思う。(日本経済新聞社の記事より)

自民・安倍氏、同友会代表の靖国発言批判

 自民党の安倍晋三幹事長代理は27日、都内での講演で「(企業が)いかに売り上げを増やそうか考えるのは当然だが、国のために殉じた人たちを引き換えにしてよいのか」と述べた。小泉純一郎首相の靖国参拝中止を希望した経済同友会の北城恪太郎代表幹事を批判したとみられる。

 ふたたび住友のトップの名語録に戻る。六代目の総理事、小倉正恒は

 「実業界は金儲けだけするところではない。まず立派な人間になることが大切だ。そうでなければ大実業家にはなれない。

と説いたし、先に上げた伊庭貞剛はまた、

 「君子財を愛す、これを取るに道有り

を座右の銘にしていた。これは「立派な人物は、財を尊重して、手に入れるにも道に沿って行うという意味であるが、会社・企業もまた金もうけするためにつくられたものであって、決してこれを恥じてはいけない、その手段が人の道にはずれないことが肝要である」という意味だ。

 しかるに、北城氏や小林氏は手段が人の道にはずれようが、とにかく金もうけだ、と考えているらしい。経済同友会の代表幹事は立派な人間でなくても勤まるポストなのだ。そんなこんなで、しばらくはIBM(およびXerox)という社名・ブランドは見たくない気分だ。というわけで、さらば OS/2 (謎)

[補足 (平成16年年12月13日)]

 12月9日付で日本IBMから

  【お知らせ】Lenovo社とのPC事業の戦略的提携つきまして【IBM PC Tips】

という題名のDMをもらった。周知の通り、米IBM本体のPC事業が中共の聯想集団有限公司 (Lenovo)へ売却されることになったが、北城会長の発言はこれの伏線だったのか? という疑念がふつふつと湧いてくる。小生は OS/2 のサポーターだったがIBM PCそのものは個人で購入したことはない(職場で貸与されたことはあったが)。しかし、IBM PCのユーザには、blogで「IBMのユーザを拒否する」とまで書く人が出現している。私もかなりの個人情報を預けているので、ちと不安である。日本IBMのパーソナルソフトウェア事業部の資産は、Lenovoに行くのかIBMに残るのか、さてどちらだろう? かなり気になる‥‥

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2004.11.20

共同通信もデジタルデバイドされちゃった側‥‥

 1週間も前の記事を取り上げて論評するのは光速の時代にふさわしくないが、その原因は私ではなく衆議院にある。11月12日に開催された外務委員会の議事録が、ようやっと11月18日に公開されたため、待ちに待ったこの文が書けるのだ。ストリーミングの中継、「衆議院TV」 なら昨日まで待たずに見ることもできるのだが、やはり正式に文書になっていなければ、引用もリンクもできないので‥‥ 官報といい国会の議事録といい、日本の役所はスピードに欠けるなぁ。おっと脱線(笑)

 というわけで、ここからが本題。11月12日(金)13時28分に、共同通信が配信したニュースがある。

首相靖国参拝が阻害要因 日中関係で外相

 町村信孝外相は12日午前の衆院外務委員会で、日中両国首脳の相互訪問ができない現状について「最大原因は小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題にあるのは明確だ」と述べた。町村外相が首相の靖国神社参拝について日中関係の「阻害要因」との認識を示したのは極めて異例だ。
 同時に外相は「参拝を続けるから日中関係はもう駄目だとはならないし、ならないために外相、外務省の仕事がある」と述べ、相互訪問再開に努力する考えを強調。今月下旬にチリで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を利用して、首相と胡錦濤国家主席が会談できるよう調整しているとも述べた。
(共同通信) - 11月12日13時28分更新

 この数分前に時事通信が配信したニュースと比較してほしい。

靖国参拝、小泉首相の判断に委ねる=町村外相

 町村信孝外相は12日午前の衆院外務委員会で、中国側が反発している小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「首相という重い立場で慎重に考え、思いをめぐらせた上での行動だと思う。最終的に参拝するかどうかは、首相の判断に委ねるしかない問題だ」と述べた。 
(時事通信) - 11月12日13時2分更新

 ニュアンスが全然違う。さて真実はいかに‥‥ というわけで衆議院の議事録の公開が待たれていたわけだが、1週間も待たされてしまった。さて、11月12日の外務委員会の議事録より、該当部分を引用してみよう。

増子委員 そうしますと、これだけのチャンス、機会があるということであるならば、やはり私は、日中の首脳が相互に訪問できないということはまことに不幸なことではないだろうかというふうに思っているわけであります。  先ほど赤羽委員からもこの面については指摘がございましたけれども、今お互いが相互訪問できないという大変厳しい、そして不幸な状況が日中間にはある。先ほど外務大臣は、外国におけるいろいろな首脳会議を利用して、その機会をとらえて実は会談をしているような話がありましたけれども、しかしそれはあくまでも海外の機会を利用してであって、正式なものではないのではないだろうか、ついでの外交ではないか。そういうところで、本当にこの日中間の重要な懸案事項の解決や、あるいはさらに大きな発展をするための関係は構築できないのではないだろうかというふうに私は思っているわけであります。  大臣、日中間の首脳が、もう既に三年を超える間、実は相互訪問ができていないという状況、この大きな原因はどこにあると認識をいたしておりますか。

町村国務大臣 外国における会談が正式であるとかないとか、私は、それは正式なきちんとした会談だと思っておりますし、そこで必要なさまざまな課題について話し合われている、こう承知をしております。
 それはそれといたしまして、委員御指摘の、相互訪問という形ができていないという事実はまさにそのとおりであります。その最大の原因は何かと言われれば、それはまさに靖国神社参拝の問題であるということは、これは非常に明確であります。
 私は、総理大臣が靖国参拝をなさる、それはどういう思いからかといえば、これはもう既に総理御自身がいろいろな場面で語っておられますけれども、さきの大戦を反省しながら、また今日の日本の繁栄はその間に国家のために命を落とされた方々の貴重な犠牲の上に成り立っている、したがって日本はこれからも平和国家であらなければならないという思いを込めて参拝をしているということであって、私はそのこと自体の考え方は総理の個人的な信念として別に間違っているとは思いません。
 もっと言いますと、中国と日本との間で、死生観について私は相当違いがある。もちろん、それとてもすべての日本人が同じ死生観を持ち、すべての中国人が同じ死生観を持っているとは思いませんが、しかし私はそこでやはり明確な違いがあると思います。
 やはり、日本では多くの場合、亡くなった方は、生きている間にどういうことをやったとしても、それは神様仏様になるというような死生観を持っている方が大部分だと思います。中国、あるいは韓国も何かそうだという話を聞きました、定かではないかもしれませんが。現世で罪を犯した者は、あの世に行ってもやはりそういう扱いを受けるというような考え方がある。
 しかし、ここはある意味では、そういう国と国というのでどうしても一致できない部分というのは私はあるんだろうと思うんです。しかし、それを、違いがあるからといって、では会いませんというのは正直言っていかがなものかと私も思います。
 その違いを乗り越えて、お互いに違いは違いとして認めながら、それでもお互いがやはり日中関係は大切だという思いに至って対応してもらいたいものだということを、機会を得て私も中国の方々には、私も日中議員連盟の役員をやったりしていたものですから、いろいろな機会に今まで中国の方々にもそういう話をしてまいりました。
 今後も、今は外務大臣という立場にあるわけでございますのでその辺は私のレベルでできる最大限の努力をして、いずれにしても、日中首脳がお互いに相互訪問できるような環境をつくるための努力をしてまいりたいと考えております。

 長々と引用してみたが、全体を読めば時事通信のほうが町村外務大臣の答弁内容をより正確に伝えていることが判る。共同通信の

 「最大原因は小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題にあるのは明確だ」

は、まったく違うニュアンス、本人の意図を正反対に捻じ曲げた要約の好例だろう。別の表現をすれば、「メディアによる意図的な(悪意に満ちた)ミスリード」だ。なんといっても、あの朝日・毎日ですらここまでの歪曲、あるいは曲解に満ちた記事を出してはいない。共同通信だけの「特ダネ」である。

 町村外相の答弁を正確に要約すれば、

 「最大原因は靖国神社参拝の問題であるのは明確だ」

であるべきで、その真意は

 「日中両国民の死生観が違い、国と国とではどうしても一致できない部分があるという問題」

のハズだ。やや長めに要約すれば、

「小泉首相をはじめとして、日本では多くの人が、さきの大戦を反省しながら、また今日の日本の繁栄はその間に国家のために命を落とされた方々の貴重な犠牲の上に成り立っている、したがって日本はこれからも平和国家であらなければならないという思いを込めて靖国神社へ参拝をしているが、中国は、A級戦犯を崇め侵略戦争を賛美することだと非難するという認識のギャップがある。これが日中関係を阻害している最大原因たる問題だ。」

となるだろう。件の記事を書いた共同通信の記者、高校入試レベルの現代国語からやり直しなさい。こんな国語能力で記者が勤まるのかね? 呆れた。

 まったく、町村外相の答弁を最後まで読まずに(聞かずに)書いたとしか思えないのだが、実際には記者席で聞いていたのだろう。しかしながら、「その最大の原因は何かと言われれば、それはまさに靖国神社参拝の問題であるということは、これは非常に明確であります。」まで聞いた瞬間、脊髄反射で「最大原因は小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題にあるのは明確だ」と勝手に理解し、それ以降の答弁は頭に残らず素通りしていったのだろう。人間は先入観に支配されがちな動物であるから。

 いくら午前中の答弁内容をもとに昼一番で流したニュースとはいえ、デスクの側で「衆議院TV」 を使って答弁内容をチェックしてから配信すればよかったのに(笑) 共同通信も、デジタルデバイドされちゃった側に陥りつつあるようだ(嘲笑) 文明の利器を使いこなせてないぞ。

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2004.11.18

続・フィッシングに釣られるな

 昨晩、2通目(2種類目)のフィッシングメールが届いた。こんな情けない日本語に釣られる人も珍しいとは思うが、念のため晒すことにする。前半は、英文のフィッシングメールを機械翻訳しただけなのだろうが、後半はそれなりの日本語になっているところが不思議だ。

 ------ (ここから) ------


From: "Visa Support"
Subject: Get Verified By Visa
Date: Thu, 18 Nov 2004 00:04:47 +0100

貴重なVISA所有者

日本VISA カードで順序のクレジットカード番号を堤出しなさい。

VISA確認されるカードプログラムは商人パスワードを十分に今喜ばす更新を登録する。
堤出するためにリンクを次にかちりと鳴らしなさい

  https://www.visa.co.jp/verified/

お手続きは、次の手順に従ってください。
・上記のリンクをクリックして、カード情報を確認してください。


このサービスにより引き起こされるご不便に関しては、深くお詫び申し上げます。

VISA 社員一同


* ご注意:VISA カードの更新に失敗した場合、一時的にカードが使用できなくなります。

ゥ Copyright 2004, Visa International Service Association.All rights reserved.

 ------ (ここまで) ------

 なお、今回のメールの URL は、

<a href=3D"http://bagpula.net/verified.php">https://www.visa.co.jp/verified/</a>

と記述されている。http://bagpula.net/ の運営者が犯人なのだろう。

ヘッダを見ると、メールの送信元はこうなっている。

 ・Received: from Dwightkk77eu98cb90h (164.194.72.165)
     by basrvdbncgq551.hotmail.com
     (InterMail vM.5.01.06.05 953-232-557-002-606-543758844) with SMTP

 今のところ、文面の日本語が怪しすぎる(笑)。まぁ引っ掛かるほうがマヌケな状態だが、これから日本語をを母国語とする奴が真似して、だんだんと手口も巧妙になっていくのだろうなぁ‥‥ ご用心、ご用心。

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2004.11.16

「座右のレファ本」お酒編 (1)

 タイトルは、日垣隆マニアックスな人ならご存知の「座右のレファ本」シリーズをパクッてみた。「レファ本」とはレファレンス・ブックのことで、図書や論文など文献について調べる時に便利な書誌・索引誌・目録類や、ある事柄 や言葉について調べるための百科事典・専門事典・辞書などを指す。日垣隆はメールマガジン(新「ガッキィファイター」2004年6月16日号)でこう書いている。

 今は、机上のパソコンと光ケーブル(や電話回線)を通じてインターネットは使い放題ですし、「調べる」や「正確さを期す」という作業の在り方は大きく変化しています。  が、専門家の使用に何十年も耐え、また何百人もの手によって編集・校閲され続けてきたレファレンス・ブックを舐めてはいけません。

 この指摘は、お酒、特に日本酒に関しては特に重要だろう。世間に流通している書籍には初歩的な間違いが多く、それを鵜呑みにしたウェブサイトが林立している。元全国小売酒販組合中央会々長で、「酒造りから、流通、小売まで、現代の酒事情すべてを語ることのできる論客。」と紹介されている人が書いた本(「問題の酒、本物の酒」)ですら、見開き(2ページ)につき1個では収まらないほどの間違いがある。ふつう「マニア」と呼ばれる人が存在する分野では、こんないい加減な情報は徹底的に指弾され訂正がなされるものだが、こと日本酒に関しては間違いが大手を振ってまかり通っている、というのが現状だ。売り上げが長期低迷傾向にあるのもむべなるかな。

 とまぁいきなり悲憤慷慨してしまったが、「座右のレファ本」お酒編の第一弾はこの本。

 ・加藤辨三郎【編】「日本の酒の歴史-酒造りの歩みと研究(復刻版)」研成社(8,400円)

  sake_rekishi.jpg

 酒造史に関しては、この本を押さえておけば間違いない。星の数ほどある日本酒本の、酒造史に関する記述はたいてい、この本に収録された加藤百一氏の論文「日本の酒造りの歩み」からの引用だと思ってよい。日本酒本の参考文献に挙げられる書籍としては、同じ執筆者による単行本「酒は諸白」(平凡社、2,732円)や「日本の酒5000年」(技報堂出版、1,995円)のほうが多いかもしれないが、これらは結局、「日本の酒造りの歩み」の改訂と要約なのである。もちろん、孫引きで済ませている安直な日本酒本もまた数多くあるのだが。

 さて、「日本の酒の歴史-酒造りの歩みと研究」の瞠目すべき点は、内容が日本酒(清酒)の歴史に留まっていないところだろう。まず、こちらも正真正銘の「日本の酒」である本格焼酎と味りんの歴史が記述されている。まさしく「題名に偽りなし」といえる。また、清酒・本格焼酎・味りんの歴史だけではなく、本書の編纂時点(昭和51年)での最新の酒造技術が、当時の第一線の研究者によって記述されている。村上英也・野白喜久雄・秋山裕一・佐藤信・菅間誠之助・山下勝氏と錚々たるビッグネームが、まだ、醸造研究所でバリバリの研究者だった頃の文章だ。

 また、この本が編纂された経緯も注目に値する。冒頭にある坂口謹一郎氏の「本書に寄せて」より抜粋する;

 協和醗酵工業株式会社は、その創立二十五周年の記念事業として、会長加藤辨三郎博士の発意により、社史の発刊というような世間一般に見られることではなく、先には諸専門家によるわが国のアルコール事業の発展の経過を記述した『日本のアルコールの歴史』を刊行され、今回は、それに次いで『日本の酒の歴史』の編著を完成されて、筆者に感想を求められました。(以下略)

 本書の発刊当時、協和醗酵工業株式会社は清酒の醸造も手掛けていたが、本文中には自社については一切触れていない。全巻を通じて、記述は中立的な「日本の酒の歴史」に徹している。素晴らしい社会貢献、文化事業だったのである。

 本書の内容における個人的な白眉は、アルコール添加法と増醸法の歴史と解説の部分だろう。このところ、日本酒本には、著者が純米原理主義者かアル添擁護派かを問わず、アルコール添加法と増醸法を正確に記述したものは極めて少ない。せいぜい、篠田次郎氏の「吟醸酒の光と影」(技報堂出版、1,890円)くらいだろうか。純米原理主義者はヒステリックに非難することに急で、その技術的内容を正しく伝えようとしない。アル添擁護派はその効能を得々と語るのに比べて、原材料や混和比率などのデータを明言せずボカしている。これではギャップは大きくなるばかりだ。このため、現在の日本酒(清酒)党にとって重要な論点だというのに、事実を正確に把握している人は少なく、無茶苦茶な論拠で口角泡を飛ばしている人をよく見る。嘆かわしいと思う。

 できれば本書の該当箇所だけにでも目を通し、共通の正確な知識に立って、議論を進めてほしいものである。

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2004.11.15

中国の潜水艦による領海侵犯事件のおさらい

錯綜した情報もあるが、時系列に沿って新聞記事からの抜粋でまとめてみました。ご参考まで。

〇 前日まで(~11月9日)

・10月22日以降、種子島や魚釣島付近で中国の潜水艦救難艦や曳船(えいせん)、測量艦が確認されており、中国海軍潜水艦が周辺で調査活動していた可能性が高い。(琉球新報

・10月29日から11月8日にかけ、沖縄周辺海域では日米合同対潜水艦特別訓練が実施されていた。(琉球新報

・11月5日、海上自衛隊のP3C哨戒機が鹿児島県・種子島の南東の公海上で、中国海軍の潜水艦救難艦と、故障した船を曳航(えいこう)する航洋曳船(えいせん)の2艦が、変進や変速などを行っているのを発見し、連絡を受けた第4護衛隊(広島県呉市)の護衛艦「あけぼの」が監視を始める。(朝日新聞

・11月5日から、海上自衛隊は護衛艦「あけぼの」を現場海域に急派。さらに、2機のP3C哨戒機が音響探知機(ソノブイ)を多数投下するなどして、24時間体制で監視飛行を続けていた。(読売新聞

・11月8日正午ごろ、護衛艦「あけぼの」が種子島の南東約315キロの公海上で両艦を確認した。(朝日新聞

・11月9日未明から、海上自衛隊は件の潜水艦を追跡していた。(読売新聞


〇 当日(11月10日)

・午前4時ごろ、潜水艦はP3Cが先島諸島南方海域で確認した。(琉球新報

・午前4時40分ごろ、石垣島の南西地点を北上中であるのを、海上自衛隊のP3C(対潜哨戒機)が発見、追跡を開始した。(産経新聞

・午前5時40分ごろ、P3Cが潜水艦の領海侵犯を確認。(読売新聞

・午前6時すぎに、潜水艦が陸地から十二マイルの領海と公海の“線上”に達した。(産経新聞

・午前6時ごろ(領海侵犯を確認した時点)から、海自P3C機から連絡を受けた海上幕僚監部は防衛庁運用局-内閣官房経由で首相官邸に対し、警備行動発令の了承を内々に要請。だが官邸側は「状況を把握して、様子を見守る必要がある」と即答しなかった。(産経新聞

・午前6時25分、海上保安庁では監視のため航空機を派遣。(産経新聞

・午前6時半ごろ、大野功統防衛庁長官が報告を受ける(11月11日に大野長官が衆院安全保障委員会で述べる-毎日新聞

・午前6時半すぎ、海上自衛隊は「完全に領海内を航行中」であることを確認した。(産経新聞

・時間不明、現場近くを航行中だった護衛艦「くらま」も対潜哨戒ヘリにより、不審潜水艦の警戒に入った。(産経新聞

・潜水艦は領海内を時速十一キロから十四キロで潜航した。(産経新聞

・午前6時50分に首相官邸の危機管理センターに官邸連絡室を設置。(琉球新報

・午前7時ごろ、細田官房長官は秘書官を通じて連絡を受ける。(産経新聞

・午前8時前、潜水艦は2時間弱にわたって領海内を潜航したあと領海を離れた。(朝日新聞

・午前8時前、大野功統防衛庁長官が秘書官から最初の連絡を受ける(11月10日に大野長官が記者団に語る-毎日新聞

・午前8時ごろ、小泉首相は電話で報告を受け、海上警備行動の発令を承認した。(ロイター産経新聞

・午前8時10分に官邸連絡室を官邸対策室に格上げ。(琉球新報

・午前8時45分、大野功統防衛庁長官は自衛隊法八二条に基づき、小泉純一郎首相の承認を得て、「海上における警備行動」(海警行動)を発令した。(産経新聞

・午前11時20分、細田官房長官が領海侵犯や警備行動発令を公表した。(産経新聞

・10日午後、海上警備行動の一環として潜水艦の追尾を続行。同艦は先島群島周辺海域を南方から北方に移動する際に領海を侵犯。10日夜時点で同群島北方の公海を潜航しており、海上自衛隊の護衛艦、P3C哨戒機、対潜ヘリで監視している。(時事通信

・10日午後、細田官房長官が会見で、海上警備行動の発令が領海外に出た後になったことについて「領海の近くを航行しているので、海上警備行動を継続する必要がある。領海内に再突入する恐れもある(ためだ)」と説明した。(毎日新聞

・10日夜、中国人民解放軍の熊光楷・副総参謀長は橋本元首相と会談し、国籍不明潜水艦の日本領海侵犯について「報道で初めて知った。詳しいことはわかっていない」と述べた。(読売新聞

〇 翌日以降(11月11日~)

・11日未明まで、海上自衛隊は護衛艦「ゆうだち」「くらま」の2隻と搭載ヘリ、P3C哨戒機などで追尾を継続。防衛庁によると、潜水艦は領海を抜けた後、先島諸島北方の公海上を時速50キロで潜水航行した。(共同通信

・11日午前、原潜は沖縄本島西方の東シナ海を潜航して速度を落としながら北上しており、海上自衛隊のP3C哨戒機2機と護衛艦2隻が追尾している。(読売新聞

・11日午前、細田官房長官が記者会見で、「潜水艦は領海の外を北方に向かって動いている。蛇行しているとも聞いている。きちんと追尾している」と説明したうえで、「(国籍特定などには)なおかなりの時間を要する。一番はっきりするのは、浮上したり、どこかの港へ向かうことだ」と述べた。潜水艦が領海内を航行した時間に関しては、「おおむね2時間弱だった」と語った。(読売新聞

・11日午後、潜水艦は沖縄本島西方の尖閣諸島北側の公海上を航行中という。潜水艦は時折、針路をジグザグに変更するなど不規則な動きも見せている。航空自衛隊も潜水艦を支援する航空機の出現に備え、現場海域上空での警戒監視を強化している。(時事通信

・11日午後、防衛庁の守屋武昌次官は記者会見で、「10日は領海侵犯後、位置的に先島諸島だけでなく、尖閣諸島など大小の島があり、潜水艦の航路によっては再び侵犯する可能性があった。現在は領海内に近づくことなく航行している」と述べた。防衛庁によると、原潜は10日は時速約50キロで航行していたが、11日はかなり速度を落とした。(時事通信

・11日夕、小泉首相は記者団に「(相手国が判明すれば)しかるべき対応を取る」と述べ、中国国籍と断定した段階で、中国政府に抗議し、謝罪や原因究明を求める考えを示した。(読売新聞

・11日夕、小泉純一郎首相は記者団に「安全保障上の問題もある。あまりはっきり言わない方がいいということもある」と述べ、潜航したまま中国領海に入った場合は国籍の特定を見送る可能性を示唆した。(共同通信

・11日夜、海上自衛隊は尖閣諸島北方の公海上を護衛艦2隻と搭載ヘリ、P3C哨戒機などで追尾を続けた。日本の領空外に設けた防空域の防空識別圏(ADIZ)まで追尾を続ける。(共同通信

・11日(時間不明)、中国外務省の章啓月報道副局長は記者会見で、日本領海を侵犯した潜水艦について「中国側も注目している」と述べ、事実上、中国艦である可能性も否定しない立場を示した。同副局長は、潜水艦の国籍について「具体的に把握していない」とする一方「勝手に推測すべきではない」とも指摘。国籍の特定を待たず日本側で中国艦との見方が強まり、日中関係が悪化することへの憂慮を示した。(西日本新聞

・11日(時間不明)、中国・北京を訪問中の橋本龍太郎元首相は11日、曽慶紅国家副主席、曹剛川国防相と相次ぎ会談し、曽、曹両氏とも国籍不明の潜水艦が日本領海を侵犯した事件について、「関心を持ち、調査している」と述べ、潜水艦が中国海軍所属であることを否定しなかった。(時事通信

・12日午前7時すぎ、潜水艦は沖縄の北西約500キロの東シナ海で日本の防空識別圏を出た。(時事通信) 潜水艦は沖縄西方の公海を中国方向に潜水航行している。海上自衛隊は潜水艦の行動監視や国籍特定のため、P3C哨戒機などによる追尾を続行しており、防衛庁は探知したスクリュー音から中国海軍の「漢(ハン)級」原子力潜水艦とみている。(共同通信

・12日午後1時ごろ、中国方面へ潜航を続けていた原潜は沖縄本島の北西約500キロに達し、防衛庁が防空識別圏の外側にあらかじめ設定していた追跡ラインを超えた。(毎日新聞

・12日午後3時50分、大野功統防衛庁長官は自衛艦隊司令官に海上警備行動の終結を命令した。(時事通信

・12日夕、町村外相は中国の程永華駐日公使を外務省に呼び、「東シナ海における中国のガス田開発や海洋調査船の問題について、日中間で協議を続けるという時で、大変遺憾だ。誠実かつ迅速な対応を求める」と述べ、謝罪を要求するとともに、事件に至った理由の説明と再発防止も求めた。程公使は「ただちに本国に報告する」と答えたが、原潜の行動については「調査中であり、今ただちに抗議を受け入れ、謝罪するわけにはいかない」と後日回答する姿勢を示すにとどまった。(読売新聞毎日新聞

・12日夜、中国外務省は「関係方面が現在状況を把握しようとしているところだ」との報道官談話を発表した。(読売新聞

・13日午後、王毅駐日中国大使は和歌山県の高野山大学で開かれた自民党・二階グループの研修会で講演し、「中国と日本の間には時々波風も立つが、お互いに尊重し合い、落ち着いて解決の策を探っていくことがわれわれに求められている」と述べた。潜水艦による領海侵犯事件には直接触れず、領海侵犯の認否や日本政府が求める謝罪などについては一切言及しなかった。(時事通信

・13日午後、自民党の武部勤幹事長は和歌山県の高野山大学で開かれた同党二階グループの研修会で講演し、中国原潜による領海侵犯事件について「中国との関係は大事で協力してアジアの安定に努めなければならない。しかし、言うべきことはちゃんと言わなければならない」と述べ、中国に抗議と謝罪を求めた政府の対応を支持した。(毎日新聞

・14日、中川昭一経済産業相はフジテレビの報道番組に出演し、中国の原子力潜水艦による領海侵犯について「(以前から)当然やっていただろう」との認識を示した上で、「資源問題について、もう情報提供してくれとか、話し合いしてくれというのは、我慢の限界だ。ひとつ先の段階にいくきっかけにこの問題がなりかねない」と述べ、東シナ海で中国が進めるガス田開発をめぐる問題への影響も避けられないとの見通しを示した。(時事通信

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2004.11.13

気になる数字

 11月10日、沖縄県先島列島(宮古・石垣諸島)周辺で中国の潜水艦がわが国の領海を侵犯した。海上警備行動の発令が遅れたり、発令したこと自体の情報公開が遅れたことから「政府の危機管理がなってない」などと騒いでいる野党議員、言論人がいるが、その中には有事法制の制定や自衛隊法の改正に対し、原理的にすべて反対してきた連中がいる。いったい誰のせいやねん? と小一時間ほど問い詰めたい。この手の連中には、無責任、マッチポンプ、二枚舌、蝙蝠野郎‥‥ という蔑称がふさわしい。

 それはサテオキ、今回の事件の報道で、個人的に気になる数字があった。

 以下は共同通信社の配信した記事「中国「漢級」原潜の可能性 潜水艦の追尾継続」からの引用。

 国籍不明の潜水艦が10日、沖縄の先島諸島海域の日本領海内を航行し、政府が海上警備行動を発令した事件で、海上自衛隊は同日午後も護衛艦「ゆうだち」「くらま」の2隻と搭載ヘリ、P3C哨戒機などで11日未明まで追尾を継続した。防衛庁によると、潜水艦は領海を抜けた後、先島諸島北方の公海上を時速50キロで潜水航行した。  防衛庁は、探知した潜水艦のスクリュー音から、近年周辺海域で活動を活発化させている中国海軍の「漢(ハン)級」原子力潜水艦の可能性が高いとみて確認を急いだ。ただ「浮上しない限り国籍特定は困難」(海自幹部)という。

 ほぼ同じ内容の記事「潜水艦、沖縄西方公海を航行=不規則な動きも-防空識別圏外で最終判断・防衛庁」が時事通信社からも配信されている。

 同庁によると、日本近海で活動する原子力潜水艦は米、ロシア、中国で、領海侵犯をした国籍不明の潜水艦は、海上自衛隊が潜水艦のスクリュー音(音紋)を分析した結果、中国の「漢(ハン)級」原潜の可能性が高いことが分かっている。10日は時速約50キロで航行していたが、11日はかなり速度を落とした。同庁は潜水艦が日本のADIZを出た時点で追跡を打ち切るかどうか最終的な判断を下す方針。

 時速50キロで潜水航行した、に注目だ。艦船の速度は伝統的にノットで計られ、メートル法に直せば 1ノット = 時速 1.8532 キロである。時速50キロということは 26.98ノット、約27ノットだ。ここで漢級(HAN Class)のスペックを調べると、「世界の艦船」の特集・増刊・別冊や学研 「現代の潜水艦」のどれでも「速力:水中25ノット」とある。時速に直せば約45.8km/h。潜水艦の諸元はトップレベルの機密事項であるから、これら書籍に記載された値はあくまで西側軍事筋の推測値である。

 さぁ、報道された「約50キロ」は実際にはどの程度の数値なのだろう? 防衛庁の広報資料が 5キロ刻みで表現されているなら四捨五入の範囲は 47.5~52.5 だし、10キロ刻みであれば 45~55 だ。控えめに見ても推測値を叩きだしていることになるし、もしかするとそれを超えているのかもしれない。漢級は1974年~1990年にかけて就役し、最終の5番艦でも艦齢15年というロートルだし、上記の書籍によれば「推進装置に解決すべき問題がある」ようで「就航率は高くない」とされているが、ここでは推測通りのスペックを数時間にわたり連続して叩きだしているように読める。さらに、これでも最高速ではなく、まだ余力を残しているのかもしれない。(ちなみに艦齢15年といえば、わが海上自衛隊の潜水艦では第一線を離れて特務艦や実験艦に回されようか‥‥ という年数である)

 となると、同じ推進機関を搭載しているとされる、原子力弾道ミサイル搭載潜水艦 夏(シア)級(XIA Class)の速力も推定値の「水中22ノット」より高いのかもしれないし、信頼性も同様に向上しているかもしれない。自衛隊や米軍はもっと前からこういった事情や正しい能力を把握していたとは思うが、民間人たる私には、ちょっと気になる数字ではあった。今回の領海侵犯は、中国海軍によるその辺のデモンストレーションではないか、と勘ぐってみたくなる。とはいえ、少しでも軍事知識がある人を「ミリタリーをたく」呼ばわりする風潮の強い現代日本には、そういった軍事デモンストレーションの効果が薄いのがご愁傷さまである。って、いいことなんだか悪いことなんだか‥‥

 さて、漢級の速力25ノットが実測で証明されたことから、別の疑問が涌いてきた。ちょうど米海軍の次期攻撃原潜として配備のはじまったばかりのヴァージニア級は、建造コスト削減と沿海・浅海での行動に主眼をおいて水中25ノット強の速力に抑えられた、とされている。先々代のロサンゼルス級の30ノット強、先代のシーウルフ級の35ノットと比べると見劣りするのは承知の上だとしても、台湾を巡って紛争の可能性の高い中国海軍の老朽攻撃原潜なみの公表値というのは‥‥ キミたちの、ホントの実力はどうなんだ?

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2004.11.11

フィッシングに釣られるな

 英語圏では昨年から「フィッシング(phishing)」と呼ばれるオンライン詐欺が流行し、VISA や eBay などの利用者が被害に遭っていた。この詐欺の手口は、(1) メールなどで著名な企業のWebサイトを装ったサイトへユーザーを誘導し、(2) クレジット・カード番号やパスワードなどを入力させて盗み取る というものだ。もっと詳しい情報は、日経BP社のサイト「“フィッシング”に気をつけろ!」などを参照してほしい。

 さて、その詐欺がついに日本にやってきた。というか、私の手元に日本語のフィッシングメールが届いた。英語版は腐るほど見てきたが(マジ)、日本語版ははじめてだ(嬉しい‥‥ ウソです 笑)。詐欺を防止するためには、実例を晒すのが一番というわけで、全文を引用する。

 ------ (ここから) ------


From: update@visa.co.jp
Subject: Verified by Visa
Date: 10 Nov 2004 19:43:48 +0200

VISA カード保有者のみなさまへ

VISA カードをお持ちのお客様は自動的に VISA 認証サービス プログラム** にご加入いただいております。

VISA 認証サービスでは、お客様の個人パスワードでお持ちの VISA カードのセキュリティを強化します。オンライン ストアでのお支払い手続きの際に、ATM で暗証番号を入力するのと同じようにパスワードを入力していただきます。これで、実際にお店でカードを使用するときと同じように、VISA カードをオンラインで安全に使用することができます。

サービスの中断を避けるため、できる限り早急にカード情報を確認させていただく必要があります。

たいへんお手数ですが、次のカード情報確認ページ* へのリンクをクリックしてください
https://www.visa.co.jp/verified/

お手続きは、次の手順に従ってください。
・上記のリンクをクリックして、カード情報を確認してください。
・VISA カード情報を確認して、個人パスワードを作成してください。
・これでアカウントが更新され、サービスが中断されることなく引き続きカードをご使用いただけます。

このサービスにより引き起こされるご不便に関しては、深くお詫び申し上げます。
VISA 社員一同

* ご注意:VISA カードの更新に失敗した場合、一時的にカードが使用できなくなります。
* クレジット カードを 2 枚以上お持ちの場合は、フォームを再送信してください。
* クレジット カードを 2 枚以上お持ちの場合は、カードに別々のパスワードを設定することができます。
ゥ Copyright 2004, Visa International Service Association.All rights reserved.
このお知らせは 2004 年 10 月 30 日まで有効です。


 ------ (ここまで) ------

 文中のURL(https://www.visa.co.jp/verified/)の部分は、実は以下の HTML ソースで記述されている。

 <a href=3D"http://81.196.163.74/verified/">https://www.visa.co.jp/verified/</a>

 このため、Outlook Express などのメールソフトからこのURLをダブルクリックすると、Internet Explorer が起動され、http://81.196.163.74/verified/ という偽装サイトに誘導されてしまう。このサイトはビサ・インターナショナルの画面デザインを盗用して作成されており、見ただけでは本物っぽい。騙されてクレジットカード番号やパスワードを盗用される人も出てきそうだ。
 
 このとき、Internet Explorer のアドレス欄には、https://www.visa.co.jp/verified/ と表示されている。手元の IE のバージョンは 6.0 SP1 で、セキュリティパッチも Windows Update でフルに適用しているというのに、ホントに困ったもんだ(OS は Windows 2000 SP4)。ちなみに、Netscape 7.1 や FireFox なら http://81.196.163.74/verified/ と表示され、偽装サイトだと一発でわかるというのに、IE は何をやっているんだろう? いちおう、IE 6.0 でも、メニューの 表示(V) → プライバシーレポート(V) で確認すれば、実際に表示されているのは http://81.196.163.74/verified/ だとわかるようにはなってはいるが、ふつーはそこまでやらない。いちいち確認する人は、そもそもこの手の詐欺には引っ掛からないだろう。やはりアドレス欄に正確な、実際の URL を表示するようにしてほしいものだ。

 さて、このメールは、昨日から今日にかけて、断続的に数通届いている。それだけでも十分怪しいのだが(笑)、カード会社に教えた記憶のないアドレス(複数)にも届いている。まぁマトモなメールではない。他にも

・送信日付が11月10日のメールに「 このお知らせは 2004 年 10 月 30 日まで有効です。」とある(笑)

・メールの送信元ホスト名を詐称したことがバレバレ
 visa.co.jp (host-193-108-234-131.hfc.pellin.ro [193.108.234.131])

といった怪しい点が目に付く。散々インターネットやクレジットカードのマイナス面が喧伝されている今日このごろ、このメールに釣られる人がいるとも思えないが、このブログの読者はあらためて注意してほしい。

 今日の格言(笑):「浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」石川五右衛門

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2004.11.06

落下傘候補者には予備選挙の洗礼を!

 11月2日、喜納昌吉参議院議員(民主党)の長男が逮捕された。ここまでは旧聞に属するニュースだが、google で報道内容を確認すると、奇妙なことに気がつく。

 まず、新聞は全国紙から地方紙まで、おおむねこのパターンだ。(引用は Yahoo! Japan News に掲載された毎日新聞の記事

<恐喝容疑>喜納昌吉議員の長男を逮捕

 神奈川県警茅ケ崎署は2日、喜納昌吉参院議員の長男で那覇市のウエーター、喜納昌哲容疑者(27)を恐喝容疑で逮捕したと発表した。調べでは、喜納容疑者は同県寒川町のスナックに勤務していた今年5月18日夕、従業員が同店のホステスと交際していると聞き、「わび金を支払え」と要求。現金30万円を脅し取った疑い。
(毎日新聞) - 11月2日22時40分更新

 ところが、テレビ局はこのパターンだ。まずは TBSのヘッドラインより

ミュージシャンで参議院議員の喜納昌吉さんの長男が勤務先の同僚の男性から金を脅し取ったとして逮捕されました。  恐喝の疑いで逮捕されたのは喜納昌吉議員の長男で、沖縄県那覇市のウェイター、喜納昌哲容疑者です。

 喜納容疑者は今年5月、神奈川県寒川町の路上で、勤務先のスナックの同僚の男性を脅し、現金30万円を脅し取った疑いが持たれています。

 喜納容疑者は先月、指名手配されていて、2日に沖縄県警が那覇市内の雑居ビルで逮捕しました。

 喜納容疑者は神奈川県内に本拠地を置く稲川会系暴力団関係者とみられており、警察で余罪の有無についても調べています。(3日 1:44)

 つづいて、テレビ朝日オンザウェブより(既に消去済のため google のキャッシュを利用)。

民主党の喜納昌吉参議院議員の27歳の長男が、恐喝の疑いで逮捕されました。

 恐喝の疑いで逮捕されたのは、民主党の喜納参議院議員の長男で、ウエーターの喜納昌哲容疑者(27)です。昌哲容疑者は今年5月、神奈川県茅ヶ崎市の路上で、勤務先のスナックの男性従業員(22)が店のホステスと付き合っていることに因縁をつけ、この男性から現金30万円を脅し取った疑いが持たれています。調べに対して昌哲容疑者は、自称、稲川会系暴力団の関係者だと名乗っているということです。 昌哲容疑者は全国に指名手配されていましたが、2日、那覇市内で身柄を確保されました。 (2004/11/02(24:07))

 故意なのか、第一報だったからなのか、新聞記事には喜納議員の長男が「稲川会系暴力団関係者だとみられており」「稲川会系暴力団の関係者だと名乗っている」という重大な情報が欠落している。それにしても、テレビ朝日が伝聞調で伝えた内容が正しければ、喜納議員の長男はアホだ。実際に暴力団関係者だったとしても、父親のことを考えたらシラを切るのが常識的な行動だと思うのだが、逆のことをやっている。「警察なんか怖くねぇよ、こっちは代紋を背負ってるんだ」という思い上がりからの言動か、はたまた父親に恨みを抱いた末の深謀遠慮か、ちょっと興味深い。それにしても喜納議員にはイタイ言動‥‥ 続報が待ち遠しいぞ(笑)

 ここで思い出すのが、米国大統領の選出過程だ。現職の大統領が再選を目指す場合を除いて、共和党も民主党も、まずは自党の候補者を絞り込むために半年もの期間に亘り、州毎に予備選挙(党員集会)を行う。この間、凄まじいネガティウ゛キャンペーンが繰りかえされる。大統領としての資質に欠けるところはないか、過去にスキャンダルはなかったか‥‥ こうして多くの候補者達が振り落とされ、最終的に1人に集約されていく。

 人気取りのために立てた候補者がスキャンダルに巻き込まれて却ってイメージダウンという事態の再発防止には、ネガティウ゛キャンペーンが行われる予備選挙はけっこう有効だと思うのだが、どうだろう。それに、予備選挙という名目で大っぴらに事前選挙活動ができるし、開かれた党というイメージを有権者に植え付けることもできる。課題は資金とボランティアの不足だろうが、それさえ目処がつけば、民主党だけでなく、自民党でも社民党でも同じ理由でお勧めだ。ま、やれっこないのは、民主集中制を堅持する共産党と、オーナーの鶴の一声で決まる公明党くらいか。

 あくまで伝聞の情報だが、喜納議員の長男はトラブルメーカー的な言動が多く、喜納議員も手を焼いていたらしい、もしそれが真実であったなら、予備選挙の段階で家庭問題が取り上げられ、候補者にはなれなかったのではないか。それに加えて、民主党の執行部内では彼の麻薬所持歴やテロリスト支援活動歴が問題視されなかったのも不思議な点で、一般党員や民主党支持者はどう思っていたのだろうか(ふつー、社民党から出てもらうべきでは?)。もし喜納議員が任期を全うし、次回も出馬するのであれば、是非、彼だけでも予備選をやってくれー(笑) 頼むよ、岡田クン。

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2004.11.05

杜氏本のあれこれ

 もう11月だが、10月に読んだ日本酒本の感想の第二弾は「杜氏という仕事」(藤田千恵子、新潮選書)。といいながら、この本についての感想はほとんどない。というのも、「知りすぎた消費者」こと 鮭野夢造さんが、私の感じたことを既に述べられているからだ。というわけで、以下は鮭野さんの「多事妄言」のページ からの引用。

同書第二章の終わりのあたりから、第三章にかけて、酒造りの話がこまごまと出てくる。この箇所、読者対象を絞り込めずに、詳しく書きすぎているのだ。たとえば、酒米の項目、一覧を挙げているが、読者にとって何の意味があるか。 (中略) この書物の問題点は、読者対象を絞り込めていないことに尽きよう。結果として、どの対象の読者にとっても、全体として親切な内容となっていない。

 いや、もう図星である。付け加えることはほとんどない。本書を一読して感じたことは、「杜氏物語としても日本酒の知識本としても中途半端で、どっちつかずに終わっている」だったが、これも鮭野さんの「読者対象を絞り込めていない」と同じことだろう。出遅れた。(って、この本、2003年末の出版なのだが‥‥ 笑)

 さて、2003年はこの「杜氏という仕事」のほか、年初に「杜氏千年の知恵」(高浜春男、祥伝社)、秋には鮭野さんお勧めの「魂の酒」(農口尚彦、ポプラ社)と杜氏の本が3冊も出版された年だった。後の2冊はどちらも杜氏のモノローグ(独談調)という体裁になっている(実際はライターによる聞き書きなのだが)。これは、斎藤隆介の「職人衆昔ばなし」以来の、名人気質を綴る際の定番スタイル(文体)だ。辛酸を舐めた修行時代の話から始まって、最後は「しかしまぁ最近の若い衆は‥‥」と説教染みた話で締めくくるというのがこの手の本の常道で、そのためには喋り言葉のほうが馴染みやすい、ということだろう。

 しかし「杜氏千年の知恵」では一般的な酒造工程の説明までもがモノローグで綴られ、越後弁がかえって耳に障る。やはり一般理論は標準語のほうが耳に優しい(笑)。内容も「杜氏という仕事」と同様に、中途半端でどっちつかずになっている。一方、「魂の酒」では語られる理論がすべて農口流であり、「杜氏という仕事」や「杜氏千年の知恵」のようなチグハグさは感じられない。しかし、残念ながら前半の修業時代の苦労話の印象が薄く(文量も少ない)、後半の農口杜氏の自慢話と説教臭さが鼻についてしまう。聞き書きの体裁の故に「エグ味」「嫌味」が目立ってしまうのだ。やはり自慢話と説教は、他人の口を借りたほうがいい。

 ところで、モノローグの聞き書きというスタイルには、些細なエピソードの積み上げ、出来事のディテールへのこだわりが必要だ。さもなくば臨場感やリアリティを読み手に与えられない。つまり、かなりのボリューム(文量)が必要になる。それでなくても話言葉のゆえに文章が冗漫に流れるため、以前と比べて活字が大きくなっていることも相まって、「杜氏千年の知恵(B6版 215p)」も「魂の酒(B6版 256p)」も内容が薄く感じられる。

 そういった意味で、小生がお勧めする「杜氏の物語」は、「醸技(かもしわざ)」(小島喜逸、リブロ社)だ。手にもつとズシっとくる375ページ(B6版)の厚さ、活字のサイズもオールドスタイルで、読み応えがある。やはりモノローグにはこれだけの文量が必要だと感じさせる。描かれた時代は戦前から高度成長期までとやや古いが、それだけに「職人芸の世界」がプンプンするし、杜氏になるまでの修業時代の話のほうが長く、自慢話も控えめで、いかにも職人伝という気がする。近年の書物の「薄さ」に不満がある人は、ぜひどうぞ。気軽に読み飛ばすのではなく、日本酒の知識本なども参照しながら、本腰を入れて読むべし。

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2004.11.02

統計の見方(続・日本酒本の陥穽)

 今日も「うまい日本酒はどこにある?」(増田晶文、草思社)の感想を。

 10月31日(日)、産経新聞の書評欄にある「著者インタビュー」に増田氏が登場していた。先日は「結論が抽象的で陳腐なのが残念」と書き、その理由が「先入観の影響」ではないかと推測した が、この記事をみて、むしろ著者の事態把握に対して違和感が募ってきたので、書評の続きを書かせていただく。以下、引用部は産経新聞からの抜粋である。

「日本酒を扱った本といえば、銘酒ガイドや杜氏(とうじ)物語といったものがほとんどです。日本酒をめぐる状況が危機的だと書いたものは意外にありません」

 小生は日本酒をめぐる状況を、この著者が繰り返し書きたてるほどには危機的だとは思っていない。日本酒よりも消費が激減しているにも関わらず、それなりに縮小均衡の状態で業界が存続している例を、職業的に多数見ているからだ。しかし、ここではむしろ、著者の危機の捉え方、具体的には統計の読み方について吟味してみたい。

では、どう危機的なのだろうか。国税庁によれば、清酒の消費量は昭和四十八年をピークに減り続け、平成十四年にはとうとう九〇万キロリットルの大台を割り、全盛期の半分近くまで激減。酒造免許をもつメーカーは平成十四年三月で二千三百六十軒あったが、現在実際に作っているのは千五百から千七百蔵と言う。

酒屋さんに至っては、日本酒不振のせいだけでなく、規制緩和の影響もあって悲惨。平成十年以降五年間で、二万四千三十九軒が転廃業または倒産、失跡者二千五百四十七人、自殺者五十八人
(全国小売酒販組合中央会調べ)。

 上記は「うまい日本酒はどこにある?」にも記載された内容だが、不正確な数値がある。酒造業は免許制であり製品は担税物資であるため、製造場数と製造数量に関しては、毎年、国税庁により正確な調査が行われている。国税庁鑑定企画官室が2003年11月に公開した「平成14酒造年度における清酒の製造状況等について」によれば、「平成14酒造年度(平成14年7月1日から平成15年6月30日までの期間)に清酒を製造した場数は1,491場」である。なお、平成13酒造年度は1,529場、平成12酒造年度は1,579場という数字が公開されている。公表されている統計に拠らず、概数で、伝聞調で書く姿勢はいただけない。

 たぶん、著者はその姿勢のゆえに、「統計のウソ」にも引っ掛かっている。既に 日本酒庵 むの字屋 の庵主氏が「平成16年10月の日々一献」の「★9月の新刊★16/10/1のお酒」で以下のように指摘されている。

最近の日本の自殺者は年間30,000人を数えると聞いているが、58人という数字がここ5年間の数字なら、1年間では12人弱ということになり、全自殺者に対する占有率は0.04%となるが、この数字なら別の業界の自殺者の方が多いのではないかとも思われる。

 小生もまったく同意見である。全人口平均や他業種と比較したうえで評価する必要があるだろう。また、実数よりも母集団数に対する比率で比較すべきだ。平成15年の 酒類免許場数表(国税庁資料)によれば、酒屋(小売酒販業)は業者数で153,344となっているため、自殺発生率は10万人あたり年間約8人となる。これはオーナー数(=業者数と仮定)に対する比率なので、従業員や家族まで含めると発生率はさらに下がる。

 一方、日本人全体の自殺発生率は10万人あたり年間24~27人(1998年~2003年)であり、特に男性の就業年齢層だけで見れば40人弱となっている(参考資料1参考資料2)。遺書があり自殺理由が判明している人のうち経済的な理由が35%を占めており、この比率を日本人全体と男性の就業年齢層の自殺発生率に乗じた場合、10万人あたりそれぞれ、年間9人弱と年間14人弱となる。酒屋の自殺原因がすべて経済的理由だとしても、発生率は平均以下だということがわかる。実はたいして危機的ではないのでは? という推測すら成り立つ。

 他業種との比較もしてみよう。、「職業別自殺者数」ページの中ほどにあるグラフ、「職業小分類別自殺者数(2003年)」を見れば一目瞭然だろう。巷間つたえられている通り、タクシーの運ちゃんを含む自動車運転手の722人が群を抜いて多く、やはり不況の影響を強く感じる(残念ながら、自動車運転手の母集団数は把握できなかった)。自営業では、理・美容業の 100人・不動産業の 82人が目を引く。例によって母集団数を調べると、理・美容業は 平成14年末の(財)全国生活衛生営業指導センターの統計資料 によれば就業者数は 60万強なので自殺発生率は10万人あたり年間16人 、不動産業は厚生労働省統計表データベースシステムによれば就業者数は35万弱なので自殺発生率は10万人あたり年間23人となっている。自殺発生率で比較すれば、理・美容業のほうが深刻だし、不動産業こそ危機的で悲惨だろう。

 同様に、転廃業の状況も見てみよう。「中小企業白書 2004年版」の付属統計資料に「業種別の開廃業率の推移」というものがある。1999年から2001年にかけての小売業の廃業率は年平均 4.4%となっている。酒屋の転廃業は5年で24,039軒であるから年平均4807軒、母集団が15万軒であるから転廃業率は 3.1%にすぎない。全小売業平均と比べれば、全然たいしたことはない。まっとうな統計の見方をすれば、どこが危機的で悲惨なのだろう?と言わざるを得ない。あるいはまた、酒屋はこれまで「需給調整要件」などに守られ、官許の地域独占にあぐらを掻き、ぬるま湯のなかで過ごしてきた。それがいまや規制緩和の波を被って、他の小売業や他業種からみれば当たり前の競争に泡喰っているだけ、という皮相な見方もできる。

 ともあれ、著者は実情以上の危機感を覚え、大メーカー以下の業界関係者に苛立ちをぶつけているように思える。性急に、しかも無理筋なことまでも。それとも、そう思う小生のほうが呑気に過ぎるのだろうか?

なお、かなり厳しいことを書いてきたが、本書に対する小生の評価は〇(一回は読め)である。(大甘だけどね)

・追記(11月4日)

 本文中に文章を引用させてもらった、日本酒庵 むの字屋 の庵主氏 より感想をいただいた。またも的確なご指摘があったので紹介する。

 売れていないところは、大声でダメだ、ダメだというものですから、それだけを聞いていると実態以上に大きく聞こえますが、ちゃんと売れているところは黙っているものだといったところでしょう。

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2004.11.01

大御心を知らぬ岡田クン

 民主党の岡田代表が、またも度し難い妄言を吐いた。

天皇発言で民主代表が「何も言えないのはおかしい」:朝日新聞(インターネット版)より

民主党の岡田代表は29日、天皇陛下が園遊会の席上、国旗・国歌問題で「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と発言したことについて「陛下も人間ですし、当然いろんなお考えをお持ちですから、何も言えないというのはおかしいと思う。一般論として申し上げるが、自由に自分の考えが伝えられるような方向に持っていくべきじゃないか」と語った。視察先の横浜市青葉区で記者団が「天皇の政治的発言という声もあるが、どう思うか」と質問したのに答えた。

 今回の天皇の発言については、「天皇は国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しない」とする憲法4条との関係で問題視する声も出ている。宮内庁は「政策や政治に踏み込んだものではない」と否定している。

 陛下にも憲法違反をお勧めするとは、さすが公務員の兼職禁止規定を無視した岡田クンらしい。まずは「綸言汗のごとし」という言葉を知らんのか、と一喝する向きも多かろうが、よく考えると、これは憲法の条文解釈という瑣末な問題ではない。むしろわが国の国体、国家構造に関わる重要問題である。

 葦津珍彦氏は、「天皇 昭和から平成へ」の第一章「現代世界の国家構造解説」でこう説かれている。

日本の皇室は、私の考えでは決して能力主義者ではない。君主にとっては、知能、勇武そのほかの政治能力も大切であるが、その能力が第一義ではない。なにが大切かといえば「公正無私」の精神的統合の資質である。「天皇には公ありて私なし」との精神を常に保たれるということなのだ。

 また、同書の第九章「平成の新帝への忠誠」でこうも書かれている。

‥‥外国では、その国の国家主席の変更ということは大変なことである。(中略) 大統領制のもっとも健全に安定した米国でも、国民は四年ごとに、国をあげての政治的苦闘をせねばならない。しかし日本では、だれもそんな苦労をしないで、「無私公正」なる高貴の陛下が、御即位なさるものと決めて何の動揺もない。(中略) 現代の平均通常人の人生を考へよ。おのれのただ一度の人生を、いかにすごすべきか、いかなる職をもとむべきかは、もっとも大切な自由である。その自由を棄てて、人生をただ、「国と国民」のための地位につくことの決意を固められた。平均人の享有する、さまざまな私意をすてて、ただひたすらに国の安定のために即位せられた。

 われら日本人が皇室を崇敬し、忠誠の意をもって陛下にお仕えするのは、ただ「公ありて私なき」皇位を継承される方々であるからだ。それを瓦解させるような行為をお勧めするとは‥‥ おのれは日本国の最後の求心力を崩壊させるつもりか? この不忠者め。
 岡田クンにだけは政権を取らせてはいけない、とこの記事を読んで再確認させてもらった。

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