「トンデモな」日本酒本の批判、第18回
はるばると18回目の、蝶谷初男氏の著書『うまい日本酒に会いたい! そのために知っておきたい100問100答』(ポプラ社、ISBN: 4-591-08389-6、2004年12月発行)の「トンデモ記述」の摘発である。今回は100問100答のうち74問め~77問めの記述が対象で、テーマは「日本酒のラベル記載事項(の後半部)」である。
例によって引用部は『うまい日本酒に会いたい!』の記述である。
吟醸酒のようなお酒の場合は2~3年貯蔵(古酒)が当たり前ですから、(貯蔵年数を)あえて表示するようなことはしないのが普通です。
(『うまい日本酒に会いたい!』 p.244)
第10回でも同じことを指摘したが、この記述は、蝶谷氏お得意の「菊姫基準」だろう。「菊姫」には2~3年、あるいはそれ以上、蔵で貯蔵してから出荷される吟醸酒も多いが、業界全体で考えるとこれは少数派だ。ふつう、冬から春先にかけて作った吟醸酒は、その年の秋あるいは冬までに出荷される数量のほうが多い。
「淡麗」とは酸味と糖分の両方がともに少ないことを指す ── いってみればエキス分が少なく、良くいえば綺麗、悪くいえば水みたいなものです。 「辛口」は、酸味が多く、糖分が少ないことを意味するわけですが、このふたつが一緒になった「淡麗辛口」をひとまとめでいうと、「酸味と糖分の両方がともに少なく、サッパリとしてキレがあるお酒」ということになります。
(『うまい日本酒に会いたい!』 p.248)
アミノ酸とアルコールはどこにいった?(笑)
お酒の味は酸と糖分だけで決まる訳ではないのだが‥‥
次々ページのグラフをご覧ください。(略)普通酒、本醸造酒、純米酒、吟醸酒は、それぞれグラフのような位置関係となります。
(『うまい日本酒に会いたい!』 pp.250-251)

いまどき、日本酒度がマイナス20超で酸度が2.5超の純米酒って‥‥ 私は市販商品では見た事がない。低アルコール酒や「明治の酒の復刻酒」などの特殊な製品を除いた、現代のふつうの日本酒ではありえない数値だ。蝶谷氏が基準としている「菊姫」でも、このタイプの純米酒を市販している訳ではない。「菊姫」の山廃純米は、酸度はこの数値にかなり近いが、日本酒度はそこまで低くない。
この数値は、明治時代か江戸時代の造りの酒質である。現代の感覚では醗酵が途中で止まってしまった酒、あるいは酸敗(腐造)しかかった酒であり、お酒としては限りなく異常値に近い。そんな純米酒が「ふつう」「一般的」だと認識していれば、そら、「純米酒なんかどこが旨いんだ!」といわんばかりの表現を繰り返すのも無理はないだろう。
蝶谷氏には、まともな純米酒や純米吟醸を数多く飲んでから、日本酒の本を書くことをお勧めします(嘲笑)
本館サイト: http://www.dd.iij4u.or.jp/~kshimz/ E-Mail: kshimz@dd.iij4u.or.jp
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