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2005.05.30

前近代な隣国との付き合い方

 近代刑法にはいくつかの基本精神がある。刑の執行や刑期の終了により刑(罪)は消滅する、とか「罪は九族に及ぶ」という連帯責任制を取ってはいけない、といったものである。同様に、反体制思想を持つことだけで刑を課してはいけない、とか、刑期中に思想教育や思想改造を行ってはいけない、といった「思想・良心の自由」もまた、現代の法治国家なら当然の原則だ。

 ところが、この「常識」が通用しない国がある。困ったことに、中共や北朝鮮といった日本の隣国である。北朝鮮では、親の因果が子に報い~♪式に、政治犯の責任を、共犯者ですらない子供や親類縁者にまで帰すことが、いまだに行われている。日本の統治に協力した者、朝鮮労働党の一党独裁に反対した者、金日成・正日父子の国家私物化に反対した者の親類縁者は「敵対階層」として公民権が制限されている。法制度においては、前近代というより封建的である。ついでに、韓国も昨年成立した「日帝強占下・反民族行為真相究明に関する特別法(通称:対日協力者糾弾法案)」の内情を見ると、法意識が北朝鮮な方向に退化しているような気がする。

 それはサテオキ、中共(中華人民共和国)である。この国においては政治犯に対する刑罰といえば思想改造が伴っている。罪状を否認し、思想改造を受け入れない者は、半永久的に拘禁される(たまに外国の圧力を受けて国外追放される者もあるが、よほどの大物に限られる)。赦免されるのは、転向して共産党政権に忠誠を誓う場合だけである。これは第二次世界大戦後の日本人戦犯に対しても適用されている(山西・大原収容所に拘禁された戦犯容疑者の扱いを詳述した「あやしい調査団・満洲どよよん紀行・7」「同・8」を参照されたい)。つまり、戦犯の赦免の条件として「中国共産党と中国人民は絶対です。我々は決して中国共産党と中国人民の言うことには逆らいません」という姿勢、思考法が心底徹底されることが要求されたのである。

 そして同じ要求が、個々の戦犯だけでなく国家としての日本にも要求されている。中共が靖國参拝などを取り上げて「歴史を正しく認識し、対処する為に反省を実際の行動にうつして欲しい」(2005年4月23日にジャカルタで行われた日中首脳会談における胡錦濤中国国家主席の発言、外務省の公式記録より)というのは、表現を変えれば「戦争に負けた日本が赦されるのは、中共の国益にかなう行動をとることによってのみである」というメッセージなのだ。そう考えると、産経新聞が5月30日に報じた、自民党の中川国対委員長や与謝野馨政調会長が「A級戦犯分祀を期待」とか「首相が私人として参拝することで、中国側の理解を得たい」というのは本末転倒だと感じる。

 現時点で日中間には、台湾島の潜在主権、日中境界線(排他的経済水域)、尖閣諸島の領有権といった懸案事項がある。たぶん、中川氏や与謝野氏の発想は、これらの交渉を円滑に進め、ついでに日本が国連の常任理事国入りすることに反対しないでもらうため、まずは靖國問題で譲歩しておいたほうがいい、というものだろう。しかし、それはメッセージの間違った理解である。中共は台湾島の潜在主権、日中境界線(排他的経済水域)、尖閣諸島の領有権といった懸案事項で日本が譲歩しない限り、歴史認識問題を持ち出すことを絶対に止めない。靖國で引っ込んだところで、次は南京大虐殺、三光作戦、盧溝橋事件、満州事変などなど、彼らは虚実とりまぜて日本を道義的に非難するネタには困らないのだ。どこまで引っ込んでも、キリがないと思う。逆の言い方をすれば、台湾島の潜在主権、日中境界線(排他的経済水域)、尖閣諸島の領有権といった現在の懸案事項で日本が中共の言いなりになれば、そしてさらに、未来永劫、中共の国益を満たしさえすれば、日本側の靖國参拝をはじめとする歴史認識の問題は不問に附されるだろう。これは断言できる。

 まとめてみよう。中共が“赦す”日本は、中共に忠誠を誓う日本だけである。それ以外の日本は、半永久的に赦免されず、戦争犯罪者のままである。かの国にとって、「反省を実際の行動にうつす」とは、歴史認識を改めることよりむしろ、「目の前の国益を差し出すこと」を意味するのだ。

 わが国の政治家や外交官には、その点を考えて行動して欲しいと思う。

[5/31 補記]

 対中ヲチなサイト「日々是チナヲチ。」の5月30日の記事 の末尾に、同じような分析が出ていた。

「A級戦犯分祀と日本の常任理事国入りセットで一件落着」

 なんて声が自民党の幹部クラスから出ているようですけど、そんな甘いことを言っていたら痛い目に遭いそうで不安です。

なんだか嬉しい(ぢつはミーハー 笑)

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2005.05.23

取り残される日本

 イネの新規登録品種のデータを何気に眺めていたら、「日本モンサント」という文字列が目に飛び込んできた。モンサントといえば遺伝子組み換え農作物のビッグネームであるが、日本でイネにまで手を出していたとは知らなかった。しかし、よく考えれば知らないのは迂闊だった。世界3大穀物(イネ、小麦、トウモロコシ)の種子の需要を考えれば、モンサントが手を出さない訳はないのだから。

 さて、「モンサント」とくれば遺伝子組み換えである。「さては遺伝子組み換えのイネが登録されたか‥‥」と思って詳細情報を見ると、さすがにそれは早とちりであった。2005年3月14日に登録された「とねのめぐみ」は「どんとこい」と「コシヒカリ」の交配種であり、同日に登録された「たべごこち」も同じく「どんとこい」と「コシヒカリ」の交配種であった。手法としては伝統的な交配育種であり、期待していた遺伝子組み換えはなかった。農林水産省の品種登録ホームページで検索できたのはこの2種だけなので、なんとなく“ホッ”とするとともに、物足りなさも感じた(笑)

 ついでなので日本モンサントのサイトを見る。遺伝子組み換え作物に関するデータがよくまとまっている。このサイトの、Data List国別栽培状況と辿って出てくる数値や、Archives参考情報と辿って出てくるこの2年間の動きにを読んで、かなり驚いた。「2004年5月19日にEUが遺伝子組み換え食品の輸入を解禁」とか「EUがモンサントの遺伝子組み換え作物15品種を加工飼料用途として継続承認することを発表」などというニュースが記載されている! わが国のマスメディアでは報道されていたのだろうか? さらにはこういうデータやニュースも記載されていた

 ・世界的に見れば、大豆は既に遺伝子組み換え作物のほうが非組み換え作物よりも栽培面積が広い。
 ・ルーマニアとスペインはすでにメガ栽培国(遺伝子組み換え作物を5万ヘクタール以上栽培)、スペインでは2003年から2004年にかけて作付面積が3倍に!
 ・ドイツでは既に小規模ながら害虫抵抗性トウモロコシの栽培が始まっている
 ・ポルトガルでも遺伝子組み換えトウモロコシ17品種の栽培を認可、2006年より栽培へ。

実は小生、「伝統的育種と遺伝子組換え育種」という怪(?)サイトのファンであり、2年前には当時のページを全読破していたのだが‥‥ この1年ほどはまともに訪問していなかった。バイオもITと並んで、近年、研究開発が盛んで動きが早い分野であるから、1年以上もフォローを怠ると、すっかり浦島太郎の気分である。

 それはサテオキ、こちらのサイトの「GM関連ニュースヘッダー」のページにもザっと目を通すと‥‥ ありました。「2005年5月15日: 1. GMフリーは、もはや陳腐なイデオロギーに」と見出しのついたセクションでこう述べている。

世界のGM作物の栽培面積は、年率20%の増加を続けついに81,000万ヘクタールに(2004年統計)達し、さらに増加中。総数は17カ国、主要な国数は(5万ヘクタール以上)、2003年の10カ国から14カ国に増加、米国、アルゼンチン、カナダはもとより、ブラジル、中国、インド、南アフリカ、ウルグアイ、アーストラリア、ルーマニア、メキシコ、スペイン、そしてフィリピンである(GM栽培面積順)。 マスコミの報道を聞いていると、年々低下を続け、米国ぐらいしか残っていないように感じるが、とんでもない、逆に増えつづけているのだ。

 まさに期待通りの怪気炎。ついでに、同じページの2005年2月10日の記事も要注目。さらにページ全体を斜め読みすると、相当に頭の体操になるだろう。作者に同意・不同意のどちらの立場を取るにせよ。

 一方で、遺伝子組み換えなどの農業・食品・環境などに関する最新情報を収集したサイト「農業情報研究所」にも、「ハイブリッドライスの父、スーパーライスとGMライスで中国米大増産を予想」というニュースがある。

ハイブリッド・ライスで昨年の世界食糧賞を受賞した中国の袁隆平教授が9日、新たなスーパー・ハイブリッド・ライスが2006年から広く栽培されることになろうと発表した。(中略)中国は近々遺伝子組み換え(GM)ライスの大々的導入に踏み切るという情報がしきりに流されているが、教授はGMライスは中国の米生産を年に300億kg増加させ、7000万人余計な人口を養うに十分と語ったという

 世界的に、遺伝子組み換え技術は着々と進展しているようだ。

 それにしても、日本のメディアは肝心なことを大きく取り上げないのね、と痛感する。新聞のヘッドラインだけ読んでいると、「EUは今でも遺伝子組み換えに反対」で「日本もEUと同様、アメリカの圧力に負けず遺伝子組み換え作物の導入には慎重であるべきだ」と思い込まされる。しかし、EUでは遺伝子組み換え作物の評価法や分別のための規制・技術的手段を具体化し、いよいよモラトリアム解除に向けて動き出している。それに対して、日本はといえば‥‥ このままではバイオ技術でも世界の趨勢に取り残されないか、と心配だ。

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2005.05.21

商標登録の出願人名義

 以前、奥の松酒造(株)が「全米吟醸」を特許申請する‥‥云々という話を湯島の「月」でお客の誰かにお聞きした記憶がある。「全米吟醸」とは、旧来の醸造アルコールではなく、自社製の純米酒を蒸留して造った米アルコールを添加した吟醸酒のことだ。米アルコールを添加した吟醸酒は以前にもあったので、特許の取得は無理だろう‥‥とその時は思っていた。

 今日、ふと思い立って特許庁の特許電子図書館で検索してみた。案の定、特許では引っ掛からなかった。では、ということで商標で検索してみた。すると「全米」「全米酒」でヒットした。現時点では出願が受理された、という状況らしい。なお、「全米」の読み(呼称)は「ゼンマイ,ゼンベイ」となっている。どちらでもいいようだ。

 ここで出願人の名義を確認すると面白いことに気がついた。「全米酒」は奥の松酒造(株)、「全米」は遊佐静子となっている。後者は奥の松酒造(株)の前社長(現相談役)だ。ついでなので、奥の松酒造・遊佐静子のどちらかが出願人になっている商標を検索してみたところ、遊佐静子で「All Rice(オールライス)」という商標もヒットした。まとめてみるとこんな具合だ。

 全米酒 :商標出願2005-11275、出願人は奥の松酒造(株)
 全米  :商標出願2005-11276、出願人は遊佐静子
 All Rice:商標出願2005-11277、出願人は遊佐静子

はて、出願人を、会社名義と個人名義で使い分けるのは何故だろう?

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全国新酒鑑評会 結果発表

昨日、独立行政法人 酒類総合研究所主催の全国新酒鑑評会の結果が公表された。平成16酒造年度(平成16年7月1日~平成17年6月30日)に醸造された吟醸酒の全国規模のコンテスト結果である。審査方法や採点基準などに疑問を向ける関係者も多数あるが、それでも受賞者にとっては嬉しい結果だろうし、消費者にとっても大吟醸酒を選択する際の1つの指標にはなるだろう。

というわけで、静岡県内の酒造場の成果をここに。

・金賞(7場)

 萩錦 (静岡市・萩錦酒造)
 出世城(浜松市・浜松酒造
 千寿 (磐田市・千寿酒造)
 葵天下(掛川市・山中酒造)
 開運 (掛川市・土井酒造場)
 杉錦 (藤枝市・杉井佐智雄)
 志太泉(藤枝市・志太泉酒造)

・入賞(4場)

 花の舞(浜北市・花の舞酒造)
 富士錦(芝川町・富士錦酒造)
 初亀 (岡部町・初亀醸造)
 磯自慢(焼津市・磯自慢酒造)

ちなみに、我が愛する「國香」「小夜衣」は出品していません。

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2005.05.02

本当に負けているのは‥‥

 今朝起きて携帯電話を見ると、「未読Eメールが52件」と出ていた。過去最高の件数だ。これまでは20件を超えたことはない。お察しの通り、そのほとんど、いや、今朝に関しては全数がスパム(迷惑)メールだった。小生は au の利用者だが、au の「迷惑Eメール防止法」が“使えない”仕様のため、ほとんど設定をしていない。不満を書き出せばキリがないが、状況は他のキャリアでも似たようなものなので、半ば諦めの境地だ。

 会社に行くと、事態はさらに深刻だった。三連休の直後とはいえ、未読メールが約900通あり、そのうち約850通がスパムである。Thunderbird の迷惑メール自動振分機能がなければ、これを手動で振り分ける羽目になっていたのは間違いない。

 ところで、ネットワークマガジン(アスキー)の最新号(2005年6月号)に、「やり取りされる電子メールのうち7~8割がスパムともなると、(プロバイダやキャリアの)スパム対策は失敗している。負けていると捉えるべき」というIIJの近藤さんの言が紹介されていた。適当にググってみると、「スパムやエラーメールがこの夏10倍に、業界全体での取り組みが急務~IIJ」というInternet Watch の記事 がヒットした。これは、昨年の9月28日に行われたIIJの記者説明会の模様を報道するものだが、ネットワークマガジンの記事もソースは同じだろう。

 さらにググってみると、RBB Today にあった記事も、同じ記者説明会をネタにしている。

1日2000通くらいのメールが来ますが、まず(メールを)消すことから始まります。海外などでは56kbpsも出ないようなダイアルアップ環境が多いものですから、メールを受信するのもなかなか大変だということを実感しています。(IIJの鈴木社長)

 IIJの社長でさえ、いや、IIJの社長だから、こうなのだ。

インターネットの世界で有名なクヌース先生はもうメールを使わないと公言しています。その理由というのが余計なメールが多すぎて仕事に支障が出ているからとおっしゃっています。(近藤さん)

 日本でも、奈良先端科学技術大学院大学の山口英教授が、スパムメールの多さに辟易するという趣旨のことを UNIX Magazine に書いていたが、ホント、インターネットの世界の有名人はタイヘンだと思う。かつてHTML Tidy のページにメールアドレスが載っていただけの私でも、上記のような惨状なのだから。

 さて、上記の Internet Watch の記事 の最後に気になる文章があった。


また、ISP間の連携については、「どのISPもスパム業者の情報などは共有したいと考えている」(近藤氏)ものの、憲法に明記されている「通信の秘密」を守った上でどのような対策が可能であるのかが難しく、現在は各社でアイディアを出し合っている状態だということで、今後は行政なども含めた業界全体での取り組みが必要だと述べた。

 スパム業者によって From: や To: に設定された、まともなユーザのアドレスは個人情報の一部であるから、関係のないISPに漏れるのは防ぐべきだ。しかし、それを除いて、不特定多数にブチ撒かれるスパムメールの内容に「保護すべき秘密」があるのだろうか?ユーザの不利益がこれだけ社会問題になっているというのに。「通信の秘密」が、電気通信事業法などで具体的に定義されることもなく、内容が曖昧なままアンタッチャブルな概念として通用し続けている。何かがヘンだ。

 このことは、日垣隆が刑法の「心神喪失」「心神耗弱」に関して述べている事情と一致する。


 他の近代国家は常に刑法改正をし続け現状に適応してきたのですが、日本だけは、夏目漱石が初めて新聞に連載小説を書き始めた年に生まれた刑法を、いまだに金科玉条のごとく抱え込んで身動きが取れなくなっているのです。 (中略)

 (刑法全体が)罪刑法定主義の体裁を成しておらず、いきなり心神喪失は罰せず心神耗弱は罪を軽減する、とだけ書き、心神喪失とは何か、心神耗弱とはどういう状態か、ということを(条文のなかで)定義すらしていないわけですね。判例にはありますが、あまりにも恣意的で、いかようにも解釈されてしまうわけです。
 (平成15年12月16日、新「ガッキィファイター」第14号より)

 失敗し、負けているのは、プロバイダやキャリアだけではない。わが国の立法府の面々と、法務官僚や旧郵政官僚(電気通信事業法の所轄官庁は旧郵政省、現総務庁)も同様だと思う。「IT立国」「e-Japan 構想」の掛け声が虚しく響く今日この頃‥‥

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