国産米は安全か?
上原浩氏の「純米酒を極める」という本には「本来、米と水だけでつくる日本酒は、これ以上ないほど安全で健康な食品である」という妄言がある(同書 p.31)。アルコール含有飲料を指して「これ以上ないほど安全で健康な食品である」と述べるのは正気の沙汰ではない。上原センセは、世界中の大多数の国でアルコール含有飲料の摂取を成人に限定している理由を知らないのだろうか? また、米と水だけでつくられる日本酒に含有されるカルバミン酸エチル(発ガン性物質)のことはご存知ないのか? いずれにせよ、「天然物由来であれば安全」というのは非科学的な思い込みにすぎないのだが‥‥
それはサテオキ、わが国にはミョーチキリンな「国産米信仰」がある。コメの自由化が政治的問題として表面化するたびに「輸入米(輸入農産物)は危険だ」とポストハーベストや遺伝子組み替えの危険性を説く輩が跋扈する。しかし、国産米が輸入米よりも安全なのか? を厳密に論証することはしない。それはそうだろう。わが国の農業は農薬と化学肥料漬けなのだから。わが国の農地の単位面積あたりの農薬と化学肥料の使用料は圧倒的な世界一である。かえって商業的にコメを生産している米国や豪州の農地は、病虫害の心配のない乾燥地帯を人工的に感慨した場所、すなわち農薬の必要がない田圃が多いのだ。
さらにまた、カドミウムの問題がある。データとしては農林水産省の「日本のコメに含まれるカドミウム」を参照されたい。日本のコメのカドミウム含有量は、世界的にみても高い水準にある。その理由は日経BP社の「食の機能と安全」サイトの「今、なぜか話題になるカドミウム食品汚染」に詳しい。是非ご一読を。ちなみに、これは古くから公開されている事実であるが、あまり広く知られているとは言い難い。
国産農産物を持ち上げる前に、このへんを冷静に考えてみよう。で、国産米至上主義も極めて非合理的で、むしろ信仰の吐露に近いものであるということは、消費者として理解ておいたほうがいい。一般消費者および納税者は、農林水産省と農協(全農、経済連 etc)の利権維持に協力する義理はないのである。
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