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2011.12.07

中野社長こそ、精白の高低の意味を間違えている

フルネットの中野社長のブログに、

「多くの人が精白の高低の意味を間違えている」 http://t.co/9hlLSCzo

という文章があります。そこで、中野社長はこう書いています。見やすくするために、改行と文番号を入れています。


① ややこしいことに、精米と精白の言葉の意味は同じで、辞書には「米を磨いて白くすること」や「穀物をついて表皮をとり白くすること」と書かれている。

② ところが、日本酒に関しては、その両方に高低という文字が加わると全く正反対の意味になる。高精米とは、高度な精米を意味し精米歩合の数値が低い(49%以下)ことを言い、低精米とは、程度の低い精米を意味し精米歩合の数値が高い(51%以上)ことを言う。

③ 高精白及び低精白は、その逆で、高精米と低精白は同じ意味であり、低精米と高精白も同じ意味である。

④ つまり、精米の高低は、精米歩合の数値の高低と逆になっており、精白の高低も、精白歩合の数値の高低と逆なのである。

⑤ これを多くの人が、精白歩合の数値の高低と勘違いして、前述のように精米歩合80%で精白歩合20%の酒を低精白だと間違えてしまうのである。

「多くの人が精白の高低の意味を間違えている」 http://t.co/9hlLSCzo



中野社長ともあろう人が、酒造用語を混乱させています。この文は、他人の文章(雑誌の記事)に対するクレームとして書かれたものなので、余計にタチが悪いというか、誤解の流布になりそうです。それを防ぐために、僭越ながら私めが修正を掛けてみます。


まず、中野社長の ①の文章は正しいです。しかし、②の書き方はあまり上手くない。というか、③以降で出てくる間違いの伏線になっています。

そして、③が決定的に間違いです。

①で述べられたように、日本語においては、「精米」と「精白」 は同じ意味、すなわち 「米を磨く(削る)」 という同じことを指しているのですから、「高精米」と「高精白」、「低精米」と「低精白」は同じ意味になります。酒造業界だけが違うわけではありません。

その流れで、④・⑤も間違っています。このへんは、後でまとめて訂正します。

さて、どうしてこういう混乱が生じるのかを、先に考察します。

これは、ひとえに、「精米歩合」の定義の間違いというか、数式を逆に設定してしまったことに起因しています。まず、「精米歩合」の計算式は以下のとおりです。

 精米歩合(%) = 精米後の白米重量 ÷ 精米前の玄米重量

つまり、米を磨くほど、精米後の白米重量は少なくなるので、精米歩合の数値は小さく(低く)なります。つまり、ふつうの日本語で「高精米」「よく精米した」という場合には、精米歩合の数値は小さく(低く)なります。

逆に、米を磨かないほうが、精米歩合の数値は大きく(高く)なります。つまり、「低精米」「あまり精米していない」という場合には、精米歩合の数値は大きく(高く)なります。

これが混乱の原因なのです。

そうではなくて、「高精米=たくさん米を磨く=値が大きくなる」、「低精米=あまり米を磨かない=値が小さくなる」ように、精米歩合の計算式を定義すればよかったのです。そうすれば、精米歩合の大きい・小さいがそのまま「精米」あるいは「精白」の高い・低いになり、言語感覚の逆転が生じなくて済みました。

しかし、もはや手遅れです。上記の計算式は酒税法の関連法令に明記され、お国の規則として永年にわたり使われているので、いまさら変更することは、違う大混乱を招きます。

ここで、上に挙げた、②の文の後半を見てみましょう。

「高精米とは、高度な精米を意味し精米歩合の数値が低い(49%以下)ことを言い、低精米とは、程度の低い精米を意味し精米歩合の数値が高い(51%以上)ことを言う。」

これ自体は正しいです。しかし、前半がいけません。

「ところが、日本酒に関しては、その (=精米と精白の) 両方に * 高低 * という文字が加わると全く正反対の意味になる。」

ここは、以下のように書くべきでした。

「ところが、日本酒に関しては、その (=精米と精白の) 両方に * 歩合 * という文字が加わると全く正反対の意味になる。」

それでは、中野社長の文章を正しく修正します。

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① ややこしいことに、精米と精白の言葉の意味は同じで、辞書には「米を磨いて白くすること」や「穀物をついて表皮をとり白くすること」と書かれている。

② ところが、日本酒に関しては、その両方に歩合という文字が加わると全く正反対の意味になる。高精米とは、高度な精米を意味し精米歩合の数値が低い(49%以下)ことを言い、低精米とは、程度の低い精米を意味し精米歩合の数値が高い(51%以上)ことを言う。

③ 精白歩合は、「精白歩合(%) = 100(%) - 精米歩合(%)」という計算式で求められる。よって、高精米歩合と低精白歩合は同じ意味であり、低精米歩合と高精白歩合も同じ意味になる。

④ つまり、常識的な日本語における 「精米および精白の高低」 は、精米歩合の数値の高低と逆になっているが、精白歩合の数値の高低とは一緒である。

⑤ よって、精米歩合80%で精白歩合20%の酒は、常識的な日本語においては「精米が低い、精白が低い、低精米、低精白」である

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おおむね、こんなところです。納得された人は、ぜひ、誤解の流布を防ぐために、再配布をお願いします。(著作権は放棄しません 笑)


以下は余談。

(財)日本醸造協会の発行する 「増補改定 清酒製造技術」 の p.152 で、精米歩合 95%・85%・75%・65% の原料米を使って、精米歩合が麹菌の繁殖に及ぼす影響を論じています。ここでは、精米歩合 95% の米を 「精米歩合が高い」・精米歩合 65% の米を 「精米歩合が低い」、と記述しています。日本酒業界に詳しい人ならご存知だと思いますが、この本は、当業界の教科書ですから、用語法はこれに従うのが一般的です。

このように、「××歩合」とか「△△割合」とか「」○○比率」とかの「高い・低い」は、必ず数値の大小に従うのです。これは小学校の算数で習う、基本的な用語法なのです。

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