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2016.08.23

10月26日の空 (その3)

 図書館から帰宅して、東京朝日新聞の縮刷版と岩井本とを改めて見比べた。やはり、岩井本に引用されている記事の内容は、これを引用したものとは思えない。縮刷版はその日の紙面の最終版、すなわち新聞社(印刷所)からもっとも近い地域に配布される紙面を基にしているので、岩井氏が見た紙面は縮刷版と完全に一致していない可能性もあるが、それにしても違いすぎる。そこで考えたのは、

 「岩井氏はたぶん、実家に保存してあった朝日新聞の記事を引用したのではないか?」

である。岩井氏は京都府相楽郡の出身とあり、相楽郡は京都府の最南端で笠置山を隔てて奈良県と接しているところだから、大阪朝日新聞のテリトリーである。

 「これはやはり、大阪朝日新聞の紙面を確認してみなければ」

 築地の朝日新聞東京本社に押しかけるという手も考えたが、朝日新聞社サイトの「朝日記念日新聞」を見ると、大阪本社版のコピーサービスを受けるには、大阪本社まで申し出る必要があるという。これはつまり、一般人が大阪本社版の縮刷版なりマイクロフィルムを見るには、大阪本社まで出向く必要があるということだろうな‥‥ と判断して、近場(首都圏)で探すことにした。ググってみると、意外に簡単に見つかった。横浜市にある 日本新聞博物館 に併設されている「新聞ライブラリー」に、大阪朝日新聞の縮刷版/マイクロフィルムがあり、閲覧および複写サービスが受けられるという。さっそく、こちらに行ってみた。

 そして、昭和15年10月27日の朝日新聞(大阪)の一面は‥‥

600400

 上の画像の通りだった(新聞ライブラリーのミノルタ製のマイクロフィルムリーダーの印刷機から出力したものを、さらにスキャンしたのが上の画像)。このうち、赤枠で囲まれた部分が、成都攻撃の記事である。こちらにも、攻撃に参加した面々の氏名が記述されていた。

Namesk

該当部分は、上の画像の通りである。画像はやや不鮮明なので、いちおう文字に書き起こしておく(なお、漢字の旧字体は新字体に変更した)。
 

“殊勲の勇士氏名

【同盟○○基地26日発】 生徒付近で敵十機を撃墜した殊勲の勇士は左の通り

飯田部隊長、山下小四郎空曹長(高知県安芸郡中山村出身)光増政之一空曹(佐賀県佐賀郡東川副村出身)白本政治三空曹(東京府出身)北畑三郎一空曹(兵庫県印南郡曽根町出身)大木芳男二空曹(茨城県出身)岩井勉 二空曹(京都府相楽郡当尾村出身)”

 
 岩井本とほとんど同じだった。こちらには、角田氏の名前が出てない。

 岩井本では、氏名の間違い(紙面では白本政治三空曹となっているが、正しくは平本政治三空曹)を訂正してあるほか、いかにも軍隊経験者らしく並び順を階級順に変えてあるが、まぁ、これは許容範囲内の修正である。しかし、これを見て、また頭を抱えてしまった。

 「岩井本も、大阪朝日新聞を忠実に引用しているという点で、間違いではない。記述は正しい」

さて、真実は那辺にありや?

(続く)

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